北米

2025.07.22 13:00

ビル・ゲイツなど富豪5人の慈善団体、アンソロピックのAIを低所得層の支援に活用

チャールズ・コーク(左)とビル・ゲイツ(右) Getty images

チャールズ・コーク(左)とビル・ゲイツ(右) Getty images

ビル・ゲイツを含む米国の著名な慈善活動家5人が、低所得層の米国人を支援するための新たな取り組みで協力する。このプロジェクトには、初代AIパートナーとして人工知能(AI)大手のAnthropic(アンソロピック)も提携している。

5人の富豪が新たな慈善団体に約1470億円以上を拠出

米国では近年、経済的な階段を上ることが困難になっている。そうした中、異なる分野で成功を収めた5人のビリオネアたちが、米国が「機会の国」であることを再び証明しようとしている。

保有資産が1169億ドル(約17兆円)のビル・ゲイツと、675億ドル(約10兆円)のチャールズ・コーク、1425億ドル(約21兆円)のスティーブ・バルマー、77億ドル(約1.1兆円)のインテュイット創業者スコット・クック、74億ドル(約1兆円)のヘッジファンド投資家のジョン・オーバーデックは7月17日、それぞれの財団を通じて新たな慈善団体「NextLadder Ventures(ネクストラダー・ベンチャーズ)」に合計10億ドル(約1470億円)以上を拠出すると発表した。NextLadder Venturesは初代AIパートナーとしてAnthropicと提携し、先端テクノロジーの活用を通じて低所得層の米国人の経済的な自立・安定を向上させようとする取り組みを支援する。

コークは最新の著書『Believe in People: Bottom-Up Solutions For A Top-Down World』の中でこう記している。「地域社会が崩壊の瀬戸際にあり、とりわけ支援を最も必要としている人々にとって、上昇のチャンスは失われつつある。自殺や薬物の過剰摂取による死も増えている。一部の人のみが優遇され、取り残される人が増えていく。米国は、そのような二極化に向かっている」。

こうした現状を受けてコークは、他の4人のビリオネアとともに、NextLadder Venturesを通じて変革を起こそうとしている。

米国人の10%以上が貧困状態という現状

「この取り組みが、人々の経済的機会の向上に長年取り組んできた5人の個人と組織の連携によって始動したことは非常に意義深い」と、NextLadder Venturesのライアン・リッペルCEOは述べている。彼は、かつてゲイツ財団の貧困対策部門を率い、ゲイツ財団CEOの臨時補佐官や共同会長であるゲイツの特別補佐を務めていた。「この活動を通じて彼らがたどり着いた共通の問いは、『日々大きな障壁に直面している個人や家族に対して、どうすればもっと手を差し伸べられるのか』ということだった」とリッペルはフォーブスに語った。

現在43歳の彼もまた、この取り組みに強い思い入れを持っている。1985年に父親を交通事故で亡くしたリッペルは、ミズーリ州においてシングルマザーの家庭で育ったが、母親もまた乳がんで亡くなった。家族が十分な保険に加入していなかったため、彼は数十万ドル(数千万円)規模の医療費の負債を抱えている。

米国では、リッペルのような境遇は珍しくない。米国国勢調査局によれば、米国人の10人に1人以上が貧困ライン以下で暮らしている。また、非営利団体アーバン・インスティテュートによると、米国民の半数以上が経済的に不安定な状態にあり、貯蓄のための余裕がないという。そんな中、AIやその他の先進テクノロジーの進歩は、こうした問題の解決に大きく貢献する可能性がある。

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編集=上田裕資

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