北米

2025.07.22 11:00

米国唯一のレアアース鉱山、国防総省が筆頭株主に 安保強化へ一歩

米空軍のF-35ステルス戦闘機。2023年3月31日、フロリダ州レイクランド(Wirestock Creators/Shutterstock)

米空軍のF-35ステルス戦闘機。2023年3月31日、フロリダ州レイクランド(Wirestock Creators/Shutterstock)

米国の軍隊は1933年のバイ・アメリカン法と1941年のベリー修正条項により、原則として米国製品を購入することが義務づけられている。これらの法律は、物資の国内調達を優先し、軍事用途の製品について一定割合の米国製部品や原材料を含むことも求めている。

問題は、米国内からの供給が限られ、じつに70%強を中国から輸入しているレアアース(希土類)鉱物を必要とする部品への依存度が高まっていることだ。この課題への対処の一環で、米国防総省が米鉱山会社MPマテリアルズの株式15%を取得し、筆頭株主になることがこのほど発表された。

MPマテリアルズは、米国内で唯一のレアアース鉱山を運営している。同社によると、国防総省が出資する4億ドル(約589億円)は、カリフォルニア州マウンテンパスにあるこの鉱山の分離・処理能力の拡充と、2カ所目の磁石製造工場の建設に充てられる予定となっている。

レアアースや高性能磁石素材の生産を手がける米リアロイズ(REalloys)のデイビッド・アーガイル最高経営責任者(CEO)は「ペンタゴンにとって、ティア1(最上層)の産業基盤が米国産のレアアース金属や磁石を利用できるようにするのは戦略的に重要です」と説明する。

アーガイルはMPマテリアルズと国防総省の取引について「需要を満たすために、しっかりしたベースロード(基幹的な供給)を提供するものになる」と評価する。一方で、2026年、2027年あるいはそれ以降に向けて、米国内の追加の供給源も利用できるようにしていく必要があるとも指摘する。

投資の拡大

ドナルド・トランプ米大統領が緊急権限を行使して、国による国内の産業や資源の管理強化に動くのでないかという臆測もすでに出ている。冷戦時代に制定された「国防生産法(DPA)」は、緊急時に大統領に国内産業を統制する大きな権限を与えており、トランプは大統領1期目にこの権限を行使していた。さらに言えば、ジョー・バイデン前米大統領も新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)への対応にあたって発動している。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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