「サプライチェーンを全体として捉え、国内の製造部門すべてに投資していくことも大切です」とクラネッキーは強調する。「一例を挙げれば、電池のリサイクルは重要鉱物の国内生産・精製を大幅に強化する手段ですし、貴重な原材料の供給を確保し、採掘・採取からかなり時間がたったあとも米国内で流通させるうえで、最も即効性があり、拡張性の高い方法のひとつです」
さらに取り組みが必要
国防総省による今回の4億ドルの出資は前向きな第一歩として評価されるべきだが、何十年もかけて積み重なってきた問題を解決するにはとうてい不十分だ。
エグジジャーのダニエルズは「ひとつの鉱山プロジェクトだけでは、先端技術で使われるレアアースの需要をすべて満たすことはできません」と言う。
「それでも、これは正しい方向への大きな一歩です」とダニエルズは続ける。「こうした採掘とリサイクルの促進を組み合わせれば、最も重要なレアアースの多くについて独立性を達成できます。たとえば米国内での石炭灰の浸出処理によって、半導体や太陽光パネル、光ファイバーケーブルの需要を賄えるだけのゲルマニウムを生み出せる可能性があります」
レアアースのニーズ拡大は国防総省が直面している数々の問題のひとつにすぎない。ほかにも、製造業のサプライチェーンをめぐる課題、国内造船所の労働力の高齢化、ほとんどのプログラムで発生しているコスト超過など、問題は山積している。レアアース需要をめぐる問題にもこれらと同様に真剣に取り組む必要があるが、容易な解決策は存在しない。
「レアアースなど重要鉱物は、現代のデジタル社会を駆動させるのに不可欠なものです。これらの原材料の需要増大に対応するには包括的な戦略が求められ、それには投資やパートナーシップ、採掘・精製・回収全体の多角化が含まれます」とサーバ・ソリューションズのクラネッキーは指摘する。「安定した国内供給体制の整備と国家安全保障上の目標の達成に向けて、米国が長期的な解決策を望んでいるのであれば、サプライチェーン全体を俯瞰した総合的な視点から考える必要があるでしょう」


