宇宙

2025.07.21 17:00

太陽系の新たな天体「アンモナイト」、すばる望遠鏡が発見 今わかっているすべて

4番目のセドノイドとして新たに発見された天体「2023 KQ14」の想像図(AI-generated illustration by Ying-Tung Chen (ASIAA))

どれくらい遠くにある?

天文学では、太陽と地球の間の平均距離を1天文単位(au)として天体間の距離を測定する。アンモナイトは太陽から71auの位置で発見された。これは海王星(30au)や冥王星(40au)の約2倍に相当する遠さだ。

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ただし、アンモナイトの公転軌道は非常に偏った楕円形で、太陽から最も遠ざかる位置(遠日点)では432auにもなる。太陽を1周するには約4000年かかる。

アンモナイトを発見した探査プロジェクト「FOSSIL(Formation of the Outer Solar System: An Icy Legacy)」を率いる吉田二美博士(産業医科大学・千葉工業大学)は、「アンモナイトがいる領域は海王星の重力もほとんど影響しない遠方だ」と指摘。これは「アンモナイトが形成された太古の時代に、何か特異な出来事があったことを意味する」と述べている

2023 KQ14(赤線)と他の3つのセドノイドの軌道(白線)を示した図。黄色い点は2025年7月時点の位置を表している(国立天文台)
2023 KQ14(赤線)と他の3つのセドノイドの軌道(白線)を示した図。黄色い点は2025年7月時点の位置を表している(国立天文台)

「第9惑星」仮説への影響は?

アンモナイトの発見は、太陽系に9番目の未知の惑星「プラネット・ナイン」が存在する可能性を低下させるようだ。太陽系外縁部にはセドノイドを含む6つの小天体が奇妙に集まって分布している。いずれも非常に細長い楕円軌道を描いており、未知の惑星の重力の影響によって「群れ」をなしているのではないかと考えられている。

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しかし、アンモナイトの軌道は他の3つのセドノイドと逆方向を向いており、軌道のクラスター構造が成立しない。したがって「第9惑星」仮説の理論に反する。

「現在の軌道が他の3つのセドノイドと一致していないことは、プラネット・ナイン仮説の可能性を低くしている」と、アンモナイトの軌道シミュレーションを行った国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)の黄宇坤(ホワン・ユウクン)研究員は説明している。「かつて太陽系に存在したものの、ある時点で太陽系外に放出された惑星が、アンモナイトと他のセドノイドの軌道が分離する原因になったのかもしれない」

第9惑星が存在する可能性はまだ残っているが、存在するとしたら、その軌道はこれまでの予測よりもさらに外側にあることになる。また、はるか昔に太陽系から放出され、過去の重力の影響だけが残っている「幽霊惑星」の可能性もある。そして、アンモナイトと他のセドノイドの軌道の違いについても説明できる必要がある。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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