政治

2025.07.26 12:00

外交か軍事力か? 核兵器の拡散を防止する上で最も効果的なのは

ロシアのRS24ヤルス核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル。2024年5月5日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシアのRS24ヤルス核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル。2024年5月5日撮影(Contributor/Getty Images)

イスラエルと米国によるイランの核施設への攻撃は、第二次世界大戦以降、絶えずつきまとっていた疑問を再燃させた。核兵器の拡散を防ぐ上で効果的なのは、外交と軍事力のどちらだろうか?

軍事力が核拡散を阻止した事例

軍事力は、特定の事例では成功を収めてきた。例えば、イスラエルの空爆によって、1981年のイラクと2007年のシリアの核開発計画が阻止された。

北大西洋条約機構(NATO)加盟国と同盟国である日本と韓国を守る米国の核の「傘」は、これらの国々が独自の核兵器を製造することを阻止する上で極めて効果的だったと言える。敵対する隣国の北朝鮮が核兵器を製造しているにもかかわらず、韓国は原子力発電計画を強力に推し進めながらも、核兵器の製造を目指してはいない。一般的に、核兵器の増強があらゆる攻撃を抑止すると考えられる「力による平和」政策は、圧倒的な報復の脅威によって核戦争を防止する上で不可欠だと主張する戦略家もいる。

他方で、数十年にわたる外交努力をもってしても、南アフリカや北朝鮮による核兵器保有を阻止することはできなかった。南アフリカは冷戦終結後にアパルトヘイト(人種隔離)政策を廃止し、核兵器を放棄したが、この事実は変わらない。

また、いかなる外交交渉も、1980年代半ばから2003年までパキスタン人技術者のアブドルカディル・カーン博士が運営していた核の闇市場に終止符を打つことはできなかった。カーン博士の闇市場には多くの仲介業者や供給業者が関与し、イランや北朝鮮、リビアなどに技術や機器などを販売していたとみられる。

外交は軍事力より有効だが限界も

こうした少数の例外はあるものの、外交の役割を示すものとして、核拡散防止条約(NPT)ほど優れた例は存在しない。1968年に制定され、70年に批准されたNPTは、現在191カ国が締約しており、歴史上最も成功した国際条約の1つとして位置付けられている。締約していないのは、インド、パキスタン、イスラエル、南スーダンの4カ国のみで、条約から脱退した国は北朝鮮のみだ。

NPTの他の2つの柱である核軍縮と平和利用の核技術の入手確保は、あまり知られていない。最初の例は1994年のリスボン議定書で、これにより、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンがNPTの締約国となり、91年にソビエト連邦が崩壊した際に国内に残っていた核兵器(合計6000発以上の核弾頭)をすべて放棄した。

平和利用技術に関しては、NPTが結ばれた1970年当時、世界11カ国に82基の民生用原子炉が存在していた。世界原子力協会(WNA)によれば、その数は1985年までに26カ国350基にまで急増し、現在では31カ国に約440基の原子炉が存在する。国際原子力機関(IAEA)はNPTの監視機関として、NPTの非締約国であるインドやパキスタンを含むすべての国の核計画を見守っている。

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翻訳・編集=安藤清香

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