経済

2025.07.22 15:00

欧州で成長する防衛産業が部品や原材料の供給を圧迫 自動車、機械、鉄道業界に影響も

フランス空軍のダッソー・ラファール戦闘機。2021年9月5日撮影(Nicolas Economou/NurPhoto via Getty Images)

供給の危機を回避するために

この調査結果は、自動車メーカーをはじめ、機械や鉄道車両などの製造業者がこうした課題に積極的に対処する必要性があることを浮き彫りにしている。防衛関連企業や政府からの需要の増加に応え、部品や原材料の供給業者がどれだけ迅速に生産を拡大できるかは依然として不透明だ。不安定化する環境下で事業の継続性と競争力を維持するためには、リスクを把握し軽減することが重要になる。

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2019年に始まった新型コロナウイルスの世界的な流行や20~23年にかけての半導体危機、22年にロシアが開始したウクライナ侵攻、そして最近世界規模で懸念されている関税に伴う貿易戦争など、供給網は近年、すでに数多くの混乱を経験してきた。こうした一連の課題に直面してきたにもかかわらず、供給網の多くは依然として事前対応型ではなく、事後対応型の問題解決に依存している。

多くの部品や原材料の供給がすでに逼迫しており、需要が爆発的に増加する見通しであることを考えると、組織が供給網のリスクを事前に予測して軽減することは極めて重要だ。製造業者が採用できる戦術としては、代替となる供給業者を特定して適格性を判断し、供給基盤を多様化すること、供給業者との透明性を高めて最終利用者が必要に応じて実践的な危機管理を行えるようにすること、半導体不足の際に使用された戦術と同様、リアルタイムの市場を監視する社内の部門横断型作業部会を設置することなどが挙げられる。

供給網の混乱はこれまで以上に頻発しており、今では新たな常態と考えられている。地政学的緊張や自然災害、変動する貿易政策などの要因が予測不可能な環境を生み出し、さまざまな業界の回復力が試される状況となっている。こうした環境で成功するには、企業はこれらの混乱に積極的に対処し、管理する能力を育成する必要がある。これには、リアルタイムの可視性を実現するための高度なデータ分析への投資や、柔軟で適応力のある供給網戦略の確立、供給業者との強固な関係の構築が含まれる。最終利用者が回復力を強化すれば、リスクを軽減できるだけでなく、常に変化する世界で成長と革新の機会をつかむことができるだろう。

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forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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