政治

2025.07.21 10:00

緊迫するロシア・アゼルバイジャン情勢、世界が無視すべきではない理由

アゼルバイジャンの首都バクーからロシア南部チェチェン共和国の首都グロズヌイへ向かう途中、墜落したアゼルバイジャン航空の旅客機。2024年12月25日撮影(Emergency Situations of Kazakhstan/Anadolu via Getty Images)

では、なぜ最近、ロシアとアゼルバイジャンとの間で敵対的な行動が相次いでいるのだろうか? ウクライナの報道によると、ロシアとアゼルバイジャンの間では戦争が差し迫っており、ロシア軍はこれに備えてアルメニア国内の基地を強化しているという。両国を戦争に駆り立てる最も可能性の高い要因は、これまで歴史的な敵対関係にあったアゼルバイジャンとアルメニアの予期せぬ和解と、米国がアルメニアを通るザンゲズル回廊をロシアから防衛するために、米軍部隊を派遣すると提案したことだ。いずれのシナリオでも、ロシアの監督は排除されることになる。米国の提案の意図は、回廊南端でのアゼルバイジャンとトルコの支配を阻止することだとの指摘もあるが、同回廊上ではアゼルバイジャンが唯一、ロシアを迂回してカスピ海につながる位置にあるため、その意図は通用しない。

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世界の中心で起きようとしている大規模な地政学的転換は、中央アジア諸国からトルコを経由して世界へと続く文化的かつ商業的な連続性を前提としている。ここで述べているのは、アゼルバイジャン産やカザフスタン産の石油、トルクメニスタン産の天然ガス、ウズベキスタン産の金などだけではない。本稿で焦点を当てているのは、19世紀以前からロシアが分割支配してきた国々に共通する、汎トルコ的な文化と民族のつながりについてだ。

トルコは現在、アゼルバイジャン国内に大規模な軍事基地を設置するなど、ロシアに代わって同地域の広い範囲で安全を保障する役割を担っている。他方で、新たな貿易ルートの受け皿として、トルコが中東や東地中海地域で影響力を強めることになるこの新たな連携に反対する勢力も存在する。イランは確かに満足していないだろうが、同国は現在、より大きな問題を抱えている。イスラエルとギリシャも、好戦的なトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領を自国の勢力圏内に押し込み、汎トルコ的な影響力の行使を阻止しようとするだろう。

ロシアにとっての脅威は、旧植民地がソビエト連邦崩壊後の依存から脱却することだけでなく、ロシア国内のタタールスタン共和国やブリャート共和国などのトルコ系民族地域が追随するようになれば、国内情勢が不安定化する可能性があることだ。言うまでもなく、ロシアの辺境地域でそうした地政学的な混乱が起きれば、同国政府がウクライナや欧州、バルト諸国に対応する能力が阻害されることになるだろう。要するに、比較的孤立した地域での限定的な対立のように見えるものが、国際的な力関係の大規模な再編を引き起こす可能性があるということだ。

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forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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