宇宙

2025.07.19 16:00

トラブル多発? 「水星の逆行」、実は不吉でも何でもない 天文学者が解説

米航空宇宙局(NASA)の水星探査機メッセンジャーが撮影した水星の画像。カラーマッピング処理により、水星の表面を構成する岩石の化学的、鉱物学的、物理的な違いが強調されている。2013年公開(NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington)

米航空宇宙局(NASA)の水星探査機メッセンジャーが撮影した水星の画像。カラーマッピング処理により、水星の表面を構成する岩石の化学的、鉱物学的、物理的な違いが強調されている。2013年公開(NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington)

「水星の逆行」が始まった。夜空に見える惑星は通常、星座の間を西から東へ移動していくが、水星は7月18日から8月11日まで、東から西へと逆戻りしているように見える。

占星術では、2025年は水星逆行に伴うトラブル多発に要注意だといわれている。星や惑星の位置が地球上で起こるさまざまな事象に影響を及ぼすと考える占星術に基づくと、水星が逆行している間はコミュニケーション、交通、テクノロジー関連のトラブルが起きやすいという。

これは天文学的にはまったくのナンセンスだ。だが、水星の逆行という現象を理解することで、太陽系について理解を深めることができる。2025年の水星の逆行運動について知っておきたいことをまとめた。

水星の逆行とは?

水星の逆行は、地球より内側の公転軌道を回る水星が地球を追い越していく際に、夜空で通常と逆方向に動いて見える現象だ。水星は太陽系で最も小さく、最も太陽に近い惑星である。

水星の公転周期は88日で、地球の365日よりずっと短い。地球が1年かけて太陽を1周する間に、水星は太陽を4周以上回っている。このため、水星の逆行は年3~4回起こる。天文学ではこれを「見かけの逆行運動」とも呼ぶ。

水星にまつわる神話

古代ギリシャ人は水星を、神々の間を駆け回る俊足の伝令使ヘルメスと関連付けた。英語のマーキュリー(Mercury)は、ヘルメスがローマ神話のメルクリウスと同一視されることに由来する。欧州南天天文台によると、ヘルメス(メルクリウス)は神々の使者を務めたことから翻訳者や通訳者の守護神とされ、富と幸運、商業などを司るほか、豊穣神や盗人の守護神としての側面ももつ。

こうした多面的な神の姿が、占星術において水星の逆行が人生に影響するとされる理由だ。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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