欧州

2025.07.19 12:00

過剰観光に「抗議」するスペインと「静観」するフランス、何が異なるのか?

スペイン北東部バルセロナの観光名所サグラダファミリア付近で行われた過剰観光に対する地元住民の抗議活動。2025年6月15日撮影(Manu Alvarez/NurPhoto via Getty Images)

スペイン北東部バルセロナの観光名所サグラダファミリア付近で行われた過剰観光に対する地元住民の抗議活動。2025年6月15日撮影(Manu Alvarez/NurPhoto via Getty Images)

欧州では観光業が活況を呈している。昨年欧州を訪れた旅行者の数は7億4700万人に上った。米ジョージ・ワシントン大学は、この数は欧州全域の人口を上回っており、必然的に地元の社会基盤や環境、地域社会に負担をかけることになると指摘した。

最も多くの観光客を受け入れているのは、フランスとスペインだ。両国を訪れる旅行者の数はほぼ等しいが、スペインでは地元住民のオーバーツーリズム(過剰観光)に対する風当たりが隣国のフランスよりはるかに強い。バルセロナでの抗議活動からイビサ島の横断幕まで、スペインの地元住民は押し寄せる観光客に対し、強い不満を表明している。一方のフランス人は、あらゆる社会問題に対して頻繁にデモやストライキを起こすことで知られているが、自国を訪れる観光客に対しては比較的寛容な態度を取っている。なぜなのか?

世界で最も多くの観光客が訪れるフランスとスペイン

フランスは昨年、世界で最も多くの旅行者を集める国として、再び首位に立った。同国の国境を通過した旅行者数は過去最高の1億人に達し、観光収入は前年比12%増を記録した。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、フランスは今年、この記録を更新する見込みで、国民の10人に1人が観光業に従事すると予測している。WTTCのジュリア・シンプソン会長は、同国の旅行業界は2025年以降も成長を維持するとみられると説明した。入国者の増加の大部分は、昨年夏に開かれたパリ五輪の成功によるものと考えられる。

一方、スペインもフランスに匹敵する9400万人の旅行者を受け入れ、観光収入は前年比10%増加した。では、なぜスペイン人はこれほど強く観光客の増加に反対しているのだろうか?

過剰観光に抗議するスペイン人と静観するフランス人

フランスでは、首都パリのルーブル美術館で最近、人混みが管理不能な水準に達しているとして職員がストライキを起こしたこと以外、特に目立った抗議運動は発生していない。しかもこれは、頻繁にデモが発生することで知られる国でのことだ。

一方のスペインでは昨年以降、地中海沿岸のバルセロナや首都マドリードなどの大都市やリゾート地のカナリア諸島などで、旅行者に対する組織的な抗議活動が頻発している。今年6月中旬には、バルセロナとマドリードの街頭に数千人の住民が集結し、「あなたの休暇は私の悲しみ」と叫び、「過剰観光は地元を滅ぼす」「観光客の強欲は私たちを破壊する」などと書かれた横断幕を掲げて抗議した。こうした抗議行動は、イビサ島やマヨルカ島などの島々のほか、北部サンセバスチャンから南部のマラガやグラナダに至るまで、全国各地で繰り広げられている。

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翻訳・編集=安藤清香

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