そして内田氏は「ゼロを呼びそうな」ポイントをローンチ時から予測できる人材になるには「失敗を重ねることも大事」と言う。
「ところが日本は、一度失敗すると二度とピッチに立てない、プレーヤーに戻れない。失敗した人こそが、失敗経験を利用してもう一度インプリメンテーションを行わなければならないのに、セカンド、サード……のチャンスが与えられない。これでは、スタートアップのエコシステムは構築されません」
内田氏はここで、「The Investor Betting on People In Their 50s and 60s—Because Older Is Better(この投資家は50代、60代に投資する——年寄りのほうがベターだから)」と題してウォールストリート・ジャーナルにも取り上げられたという、とあるシリコンバレーのベンチャー・キャピタリストの例を引いた。
「彼のところには当然、出資依頼の提案がたくさん集まるのですが、手の切れるように優秀な若い起業家には目もくれず、起業の経験がある願わくば50〜60代を選びとることが多い。この場合の起業の経験にはもちろん、『失敗の経験』も含みます。結果が失敗であっても『経験していること』、その経験則でこそ価値は上がると考えるのですね。ふつうは年齢が上のほうが物量的な経験値は多いはずですから、当然といえるでしょう」

また、内田氏は、そもそも起業はリスクを取るからこそうまく行ったときのゲインが大きいのに、日本のベンチャーキャピタリストの中には、投資先が失敗しかけるとすぐに責任問題にして『回収』に熱をあげる人もいる、と憂える。
「そうではなくステークホルダー『全員で』その学びをレビューし、『みんなで』潔く撤退し、速やかに次に行く方が投資家もキャピタルゲインが大きくなるのではないかと思いますね。もし出したお金を確実に返してほしければ、投資ではなく融資をすればいいということになりますし」
自らも投資を行い失敗も経験している内田氏の言葉には説得力がある。


