気候・環境

2025.07.20 10:00

人類の水利用、6800以上のダムが「地球の傾き」を短期間で変化させる可能性

中国湖北省の長江中流域にある世界最大級の三峡ダム(中央左下)を国際宇宙ステーション(ISS)から撮影した画像。2009年4月15日撮影(NASA’s Earth Observatory)

1835年~2011年までの全期間にわたり、自転極が移動した経路の長さの合計は約113cmにおよび、うち約104cmの移動は20世紀に起きている。

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すでに2023年には、地下水の使用に着目した同様の研究(Seo et al.)が米国地球物理学連合(AGU)の学術誌Geophysical Research Lettersで発表されていた。地下から汲み上げた水を別の場所に移動させることで、人間の活動によって膨大な水の質量が移動したことになるため、1993年~2010年の期間だけで地球は80cm近く東に傾いたと、AGUの解説記事に記されている。

気候変動に起因する氷床や氷冠の融解により、質量が極域から赤道域に移動することで、この影響がさらに増幅することが予想されると示唆する研究が、2016年に学術誌Science Advancesで発表されていた。

極移動の観測値(OBSと表示された赤色の矢印)とモデルとの比較図。地下水の質量の再分配を考慮したモデル(実線の青色矢印)は考慮しないモデル(破線の矢印)に比べて観測値との合致度がはるかに高い(Seo et al. (2023), Geophysical Research Letters)
極移動の観測値(OBSと表示された赤色の矢印)とモデルとの比較図。地下水の質量の再分配を考慮したモデル(実線の青色矢印)は考慮しないモデル(破線の矢印)に比べて観測値との合致度がはるかに高い(Seo et al. (2023), Geophysical Research Letters)

地球の極は通常、惑星の自然の揺動によって年間数mほど位置が変動するため、今回観測された変化が破滅的な結果を招く危険性があるわけではない。しかしながら、このような研究により、人間の活動が地球全体にどれほど深く影響を与えているかが浮き彫りになっている。

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今回の論文「True Polar Wander Driven by Artificial Water Impoundment: 1835–2011」は、学術誌Geophysical Research Lettersに掲載された。

追加資料とインタビューはAGUによって提供された。

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人類による地下水の汲み上げで地球は30年で約80センチ東に傾く

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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