イスラエルがシリアの首都ダマスカスに対して16日に実施した前例のない空爆は、イスラエルが中東各国の首都を比較的自由に攻撃できる能力を持っていることをあらためて示した。北はレバノンのベイルートやシリアのダマスカス、南東はイエメンのサヌア、東はイランのテヘランまで、イスラエルは2023年10月以降に勃発した複数の地域戦争において、前例のない空爆を次々に行ってきた。
同日、ダマスカスで起こった大規模な爆発がテレビの生中継で劇的に映し出されたあと、イスラエルはシリア軍の司令部や、首都を見下ろす「大統領宮殿の周辺地域」にある「軍事目標」を攻撃したと認めた。イスラエルはこれらの空爆について、シリア南東部スウェイダ県で最近、シリアの少数勢力でイスラム教から派生したドゥルーズ派とベドウィン(遊牧民)の間で生じた衝突に、シリア暫定政府が軍事介入を行ったことから、ドゥルーズ派を保護するために必要な措置だったと正当化している。
シリアでイスラム主義に根ざす現政権が2024年12月にバッシャール・アサド前大統領の体制に代わって発足した直後から、イスラエルは、ドゥルーズ派が脅かされるような事態になれば軍事介入すると繰り返し警告していた。イスラエルはまた、1974年にゴラン高原に設けられた緩衝地帯を越えて、急速に軍事プレゼンスを拡大させたシリア南部を非武装地帯にすることも要求していた。そして14日、イスラエル軍はスウェイダでシリア暫定政府軍の戦車などの部隊に対する攻撃を始め、16日にはダマスカス中心部への前例のない空爆に踏み切った。
イスラエルがダマスカスを爆撃したこと自体は以前にもある。2011年に始まった破滅的なシリア内戦中、イスラエルはシリア各地でイランとの関係が疑われる目標を継続的に攻撃し、それにはダマスカス市内の目標も含まれていた。しかし、高価値の政府目標や軍事目標をこれほど激しく攻撃したことはなかった。イスラエルはアサド前政権時代に何度か、大統領宮殿の破壊もちらつかせていたが、実際にその巨大な施設を攻撃目標にしたのも今回が初めてだった。
アサド政権崩壊後、イスラエルはすぐにシリア全土を対象とした大規模な空爆作戦を開始し、旧政権が残した軍備を次々に破壊していった。14日に始まった最新の空爆は、新政権の軍隊に対する攻撃としては明らかにこれまでで最も激しいものだ。



