30U30

2025.07.25 13:30

【私が15歳だったころ】言葉を失った「おにぎり」の光景。川口加奈が大きな仕事を生んだ小さな一歩

川口加奈|Homedoor 理事長

川口加奈|Homedoor 理事長

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号の第二特集は、世界を変える30歳未満30人「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」特集との連動企画「私が15歳だったころ」。これまでの受賞者のなかから、Homedoor 理事長の川口加奈、 芦屋市長の髙島崚輔、dely 代表取締役の堀江裕介の3人に 15歳のころに経験した、人生のターニングポイントとなった出来事を聞いた。

「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」連動企画、受賞者たちの「15歳のころ」。生活困窮者・ホームレス支援団体を設立するきっかけとなった体験を振り返る。


「なんでこの街、ホームレスの人が多いんやろか」。15歳になる少し前。バスケ部の練習に疲れ切って、中学から地元の街へと電車で帰る際に通るJR大阪環状線新今宮駅。「ホームに立つと、ホームレスのテントがずらっと並んでいる。あれは何?」。

親に聞いても「あそこは降りたらあかん」。そんな折、駅近くの公園の「炊き出しボランティア募集」の記事を見かける。

「これに行ってみたら、何かわかるかも」。その一歩が、生活困窮者・ホームレス支援団体、Homedoor代表である川口加奈の活動のきっかけになった。この町の名は「釜ヶ崎」。日本でも有数の日雇い労働者の町。興味本位で参加を決めたが、いざ手伝いを始めようとする時、スタッフからこんな一言をかけられ川口は凍りつく。

「あなたみたいな孫のような年齢の人から、命の綱であるおにぎりを受け取る気持ちを考えながら渡してあげなさいね」

「何か良いことをしに来た気持ちでいたので、申し訳なさを感じました。彼らに不快な気持ちを与えかねない。そんな配慮もせず興味だけで来てしまった」(川口)

川口自身にも偏見があった。ホームレス状態に置かれた人たちのことを「もっと勉強していれば、こんな状態にならなくて済んだのでは?」と思っていたが、それは誤解であることをスタッフらから教えられて知る。彼らのなかには経済困窮家庭で育ち、障害・疾病に苦しむ人が多いのだ、と。「私は、頑張る、頑張らないの選択肢がある環境に生まれている」と気づかされた。

寒風が吹き荒れるなか、怒濤の勢いで押し寄せてくる彼ら。正午から始まる炊き出しに、早朝から500人以上が並んだ。「3時間以上並んでおにぎり1個……。これほど大変な状況にあるんや」。

中学校で、その苦い経験を作文に書いた。当時、同世代の中高生がホームレスを襲撃する事件も起きていた。先生から諭されるより、同世代の自分が訴えかけたほうが刺さるはず。そう考え、全校集会で発表したものの、友だちの反応は薄かった。

今何をすべきか逆算する

そこから川口は変わった。ホームレス問題に触れた新聞を発行したり、友達を炊き出しに連れていったり。ボランティア部の部長として、活動の領域をさらに深めていった。高校1年生の時、あいりん地区でスタディツアーを開催、その翌年には「ボランティア・スピリット・アワード(プルデンシャル・グループ主催)」に応募した。社会課題に取り組む中高生が活動を発表・交流するプログラム。それが約3,000組の応募から2人だけ選ばれる賞に輝き、ボランティア親善大使として、米国ワシントンD.C.での国際会議に参加することになった。活動発表では紙芝居をつくって英語で発表。ところが、ある国の参加者からこんなことを言われた。

次ページ > 15歳ごろの自分と変わらぬ思い

文=加賀直樹 写真=安島晋作

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事