「それで、あなたの活動で何人のホームレスの人が救われたの?」。川口は振り返る。
「海外の子たちって、数億円規模で寄付を集め、企業と連携して活動している。問題解決のために今、何をすべきか。逆算し、定期的に考える必要があった」
川口は帰国直後、1枚の絵を描いた。
「大阪市内では当時、年間200人以上が路上で亡くなっていました。新今宮駅のホームに立つと、真ん前がずっと空き地。ここにホームレス向けの個室シェルターや就労支援を受けられる場所や、救急病院、ご飯が食べられるカフェをつくれたら……。そんな絵を描きました」
大学在学中の19歳の時、Homedoorを設立。
「ホームレスの方々のお仕事をつくろう」と考えた時、得意なことを仕事にしたほうが抵抗感なく働いてもらえると考えた。ヒアリング調査の末、彼らの自転車修理技術を生かしたシェアサイクル事業を展開。2018年からは個室型宿泊施設も運営し、これまで計6,000人以上の就労・生活支援に奔走した。ここ最近は「ネットカフェ難民」と呼ばれた層からの相談も多い。
15歳ごろの自分と変わらぬ思いとは。
「路上死を防ぎたい思いは、ずっとあります。世間は自己責任という言葉で片付けるかもしれないが、果たしてそれで良いのか」
かつては活動について親に話せなかったが、今は応援してくれ、周囲には川口と同じ熱量をもったスタッフも集まった。社会を巻き込み、大きなうねりを起こしたい。「見て見ぬふりをする大人にはなりたくなかった。私の場合『焦燥感を勝手に感じていただけ』ですが、なにも大きな一歩を踏み出す必要はなく、少し調べてみるだけでいい。できることが見えてくるはず」
かわぐち・かな◎1991年大阪府生まれ。14歳でホームレス問題に出合い、炊き出しなどの活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクル事業「HUBchari」を中心にホームレスの人々の生活・就労支援を提供する。民設民営で2棟42室の宿泊施設、カフェ「おかえりキッチン」を運営。「グーグルインパクトチャレンジ」「人間力大賞」など受賞歴多数。


