洋上に浮かぶクルーザーで、日常と非日常が溶けあう。ブランド体験イベントのために来日した首脳陣が、ファミリーの哲学と、ひとつのラグジュアリーの未来像を語った。
Azimut Yachts Japanが取り組んでいるマリーナの開発や、顧客同士のゆるやかなつながりを育てる体験型イベントは、富裕層ビジネスとしての拡張にとどまらず、暮らしのなかに、どんな豊かさを組み込めるかという問いへの答えでもある。
5月にAzimut Yachtsはブランド体験イベント「Asian Rendez-Vous」を東京で開催。東京湾に面するマリーナにはイタリア本社から経営陣が揃って来日。Azimutがこれから届けようとする「時間の価値」について語った。
Azimutは、イタリアを代表するラグジュアリークルーザーブランド。当時大学生だったパオロ・ヴィテッリが1969年に創業して以来、ファミリービジネスとして成長してきたこのブランドは、いま改めてアジア市場を見つめ、日本に“起点”を置いた。
「Azimutはこれまでアジア10カ国以上に展開してきました。このイベントでは、“アジアン・ランデヴー”の始まりの地として日本を選びました」と語るのは、Azimut会長のジョヴァンナ・ヴィテッリだ。
「日本には、美意識、ものづくりへのこだわり、人間関係の繊細さといった私たちの哲学と響き合う文化があります。デザインにこだわる私たちのカルチャーを深く理解していただき、洗練されたライフスタイルへの理解があるオーナーが多くいらっしゃる国だと認識しています」
ジョヴァンナはAzimutのあり方を「生き方に寄り添うブランド」と定義する。
「私たちはファミリービジネスです。長期的な視点と、顧客の人生に責任をもつ覚悟が、Azimutの根底にあります。クルーザーは所有物ではなく、人生の質を支える空間なのです」
AzimutのグローバルCEOであるマルコ・ヴァーレは、日本での展開において「文化的な理解者」がいたことの大きさを語る。Azimut Yachts Japanを統括する安田造船所の野澤隆之CEOだ。
「野澤さんとの対話は、“ラグジュアリーとは何か”を一から問い直すものでした。Azimutの価値を日本で伝えるには、販売ではなく、体験としての浸透が必要でした。ただ高額なクルーザーを販売することではなく、それを所有した先の豊かな時間の価値を理解していただく必要がありました。彼はその哲学を理解し、実行に移せる稀有な存在です」
Azimutは、いわゆる資本主義経済が求める市場拡大のみを目的とはしていないという。



