今後の注目ポイント
ここで注目されるのは、保安検査の変更が米国出発時の空港の保安検査を簡略化・迅速化するためのプログラムの「TSA PreCheck」の登録状況に与える影響だ。現在、DHSによる事前審査と承認を受けた2000万人超の利用者は、保安検査場で電子機器や液体をバッグから取り出さずに済み、靴も履いたまま通過できるなど、一部の措置を免除されている。
K2セキュリティ・スクリーニング・グループの副社長で元TSA職員のキース・ジェフリーズは「こうした措置が標準化されれば、TSA PreCheckの登録数が減少し、それが結果的に保安体制を弱める恐れがある」と述べている。「このプログラムに登録された人々は『信頼された旅行者』だ。登録者数が減れば、その信頼された旅行者層が縮小し、安全性の低下につながる可能性がある」とジェフリーズは語った。
一方、TSAの「靴を脱ぐ規則」の策定に関わったピーター・ディドメニカは、すべての乗客に靴を脱がせる必要がなくなったことには同意しているが「このオプションは、TSAの選択肢として残すべきだ。完全に廃止することには賛成できない」とボストンのローカル局Fox 25に語った。「ごく限られた頻度で靴のX線検査を続けるべきだ。たとえば全体の1%だけでもいい。無作為に選んで検査することで、悪意ある者に『見つかるかもしれない』という危惧を抱かせることになる」
機内持ち込みの液体が制限されている理由
液体の持ち込みが制限されている背景には、2006年に液体爆弾を機内に持ち込んで航空機を爆破しようとする計画が発覚・阻止されたことが挙げられる。BBCによれば、この計画はテロリストがスポーツドリンクのボトルに自家製の化学混合物を入れて、米国およびカナダ行きのロンドン発の便に持ち込もうとしたものだった。
米当局が保安検査で靴を脱がせる理由は?
また、TSAが乗客に空港で靴を脱がせる検査を導入した背景には、2001年12月にリチャード・リードという男がパリ発マイアミ行きの便を、靴の中に隠した自家製爆弾で爆破しようとした事件が挙げられる。この男は、機内で爆弾を爆発させようとしたが、乗員や乗客らに気づかれて取り押さえられた。これを受け、航空保安当局は、ただちに靴の検査に関する方針を策定し、これが最終的にTSAの規則として定着することになった。連邦捜査局(FBI)によれば、もしこの爆弾が爆発していれば、機体の胴体に穴が開き、墜落していた可能性が高いという。TSAはこの靴の規則を先週廃止した。
このような靴の検査の廃止や液体に関する規則の変更に向けた動きは、TSAが全米国人の国内線の乗客に「REAL ID」や、パスポートなどの公的書類の携行を義務付け、従来の運転免許証などの身分証明書では搭乗できなくなる新たな規則を導入する中で進められている。REAL IDの発行には、本人確認書類と居住証明の提出が必要となり、連邦の保安基準を強化した対応となっている。REAL ID法は20年前に成立しており、当初は2008年の施行予定だったが、延期を繰り返した末に、今年5月にようやく施行が開始された。REAL IDを持たない米国人旅行者は、空港で追加のセキュリティチェックを受ける必要がある(外国人旅行者は、有効なパスポートがあれば問題なく搭乗できる)。


