トランプ政権下、グローバルな気候変動対策の主導権は誰が握るのか?——アメリカの気候変動専門家が語る、日本の採るべき針路

photograph by iStock.com/metamorworks

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2025年、再びトランプ政権が誕生したアメリカ。パリ協定から再び離脱し、これまでの脱炭素の流れに逆行するかのような連邦政府の方針転換は、世界中のビジネスリーダーに衝撃と不安を与えている。しかし、気候変動対策の最前線で活動する専門家は、この状況を多層的な視点から冷静に見つめていた。


「連邦政府がやらないからこそ、州や自治体が立ち上がらなければという機運が高まっていると感じます」

そう語るのは、都市政策コンサルタントの古澤えり氏だ。米・コンサルティング会社HR&Aで自治体や電力会社の気候変動対策プロジェクトを手掛ける傍ら、マサチューセッツ州サマビル市の気候変動対策アドバイザーも務める。まさに、米国の政策と現場、その両方を知り尽くす人物だ。彼女の目に、今のアメリカは、そして世界はどう映っているのか。

揺れるアメリカ——連邦政府からの逆風と、州・自治体の取り組み

トランプ政権発足から約半年、連邦政府の政策転換を受けた今後の見通しは、いまだ不透明な部分が多い。この政治的な風向きの変化が、社会全体に慎重な空気を広げつつあることは、報じられているニュースからも感じ取れるだろう。

古澤氏も「アメリカの民間企業やNPO・アカデミアなど、あらゆるステークホルダーが今、口を開けば攻撃されるかもしれないという不透明な状況にある」と、民間セクターに広がる萎縮の雰囲気を指摘する。アメリカで活動している古澤氏自身も「気候変動に関する活動をすることで、個人として不利益を被るリスクは常にある」と覚悟しながら、それでもインタビューなどを通して発信を続ける理由をこう語る。

「日本の関係者から、『アメリカの連邦政府がDEIを積極的に攻撃し始めたことを受けて、日本の企業でもそれらの取り組みが後退している』という話を聞くようになりました。トランプ政権の動きを見て、脱炭素を含む気候変動対策をあきらめる企業が日本にいたとしたら本当にもったいない。そうならないように、現場では気候変動に関する取り組みが続いているということを発信し続けることが、私ができることだと考えています」

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text & edited by Miki Chigira

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