クロスセクターコミュニティが都市にもたらす価値とは

加生:最後に渋谷での10年を振り返り、改めて「つなげる30人」のようなクロスセクター・コミュニティが都市にもたらす価値とは、どんなものだと思いますか?
矢澤:課題意識を持っている人は多いけれど、リソースやアセットが足りない。その時、企業がその課題に関心を持ってリソースやアセットを提供することで、30人という場が化学反応を起こしていると思います。ただ、外からは分かりづらい面もあるので、行政としても価値をしっかり発信してほしいですね。
酒井:僕にとっては「居場所」ですね。都心には“地元”を持たない人も多いけれど、この場で同級生を得ることで、まちへの関わりが自然に生まれてくる。渋谷に残る、戻る、挑戦する。そういう意志が醸成されていくのがこの仕組みの力だと思っています。
佐々木:皆さんに「友達ができた」「お兄ちゃんができた」と言ってもらえるのが嬉しいです。つながりこそまちづくりの土台。だから今後は現役だけじゃなく、OG・OBとも再接続し、渋谷というまちを支える底力にしていきたいと思っています。
長谷部:この10年でアウトプットも出たし、新しい仲間もできた。そして、都心でこうした都市型コミュニティが継続しているのは本当に誇らしいこと。次の10年に向けて、また一緒に挑戦していきましょう。こうして10年にわたって積み重ねられてきた「渋谷をつなげる30人」の歩みは、行政・企業・NPOの壁を越えて人と人をつなぎ、渋谷から生まれたモデルは全国へと広がっていきました。
後編では、次なる10年に向けて、渋谷が世界に示そうとしている新たな都市モデルについて語り合います。
登壇者プロフィール(敬称略)
長谷部 健(渋谷区長)
原宿生まれ、原宿育ち。(株)博報堂退職後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを設立したほか、NPO法人シブヤ大学、NPO法人ピープルデザイン研究所の創設にも携わる。2003年渋谷区議に初当選。2015年4月、渋谷区長就任。現在3期目。
加生 健太朗(「渋谷をつなげる30人」発起人/実行委員代表・一般社団法人つなげる30人代表理事)
福岡県出身。高校から単身上京。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、通信会社の営業職を経て2005年にフリーランスとして独立し、NPOの広報企画等に携わる。2013年に東北での巨大防潮堤建設に関する行政(国・県・市町村)と市民との対話の場づくりを行ったことを契機に、2015年にフューチャーセッションズに参加。 2016年から「渋谷をつなげる30人」の立ち上げと運営に携わり、2019年SlowInnovationにて同プログラムの横浜・名古屋などへの全国展開や運営を担当。2022年に一般社団法人つなげる30人を立ち上げ、代表理事を務める。2023年、「つなげる30人」のさらなる可能性を求め、ADDRIVEを設立。
矢澤 修(イースマイリー代表取締役:ファシリテーター)
1983年生まれ。難病のある兄妹とともに育った原体験から福祉を学び、ITサービス業界での事業立ち上げを経て、2012年にソーシャランドを創業。ナショナルクライアント向けにマーケティング支援事業を展開した後、2016年にイースマイリー、2018年にNPO法人エースマイリーを創業し、社会課題解決型事業を推進。ビジネスとソーシャルセクターの双方での経験を活かし、社会課題を解決する「ソーシャルインパクトデザイナー」として活動。2020年「渋谷をつなげる30人」第5期に参加し、絵本プロジェクトを主導。7期からはファシリテーターとしても活躍し、現在では渋谷区の様々なまちづくりや商店街活動に貢献している。
佐々木 つぐみ(渋谷区SDGs協会:アクセラレーター)
大阪府出身、千葉県在住の3児の母。全ての軸を「子育て」にフォーカスし、有限である子ども達との時間を大切にすべく「社会で子育てをする」をテーマに活動。 2019年に一社)渋谷区SDGs協会の理事に就任。アンバサダーのスケジュールの管理、マネージメント、イベント企画、フライヤー制作、カメラマン、こども食堂、ワークショップを担当させて頂く傍ら、災害支援団体一社)四番隊として被災地で支援活動。 2020年「渋谷をつながる30人」第5期に参加。卒業後もアルムナイとして様々な交流イベントに参加し、第8期からはアクセラレーターとして参加メンバーに寄り添う。
酒井 翼(PLAYNEW取締役:事務局長)
1995年東京生まれ。大学在学中の2014年、SHIBUYA CITY FC(当時はTOKYO CITY F.C.)の立ち上げメンバーとして参画。卒業後、動画系ベンチャー企業に勤務しつつ、平日朝夜と週末をSHIBUYA CITY FCに捧げる。2019年、クラブの法人化に伴い退職し、取締役およびフルタイムスタッフ第一号として事業全般を担当。大企業から渋谷に根付く中小企業まで、200社以上のスポンサーを担当。渋谷をつなげる30人には第4期生として参加。


