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2025.07.31 15:15

渋谷区での官×民×NPOのクロスセクター実践の10年を振り返る【前編】

(左から佐々木、酒井、長谷部、矢澤、加生)

 

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加生:3月のアクション宣言発表会では、彼から「我々は、企業でも行政でもNPOでもないからこそ、災害時に真に機能する存在になれる」という言葉があって、とても印象に残り、胸を打たれました。


佐々木:ただ、彼自身は区職員としてプログラム卒業後にどう関わっていけるか、すごく悩んでもいるんです。

私自身は、彼の“役所内のキャリア”には口を出せないけれど、彼が“人生のキャリア”としてやりたいことには、これからも寄り添っていきたいと思っています。でも今取り組んでいるプロジェクトって、役所の正式な業務ではなくて、個人としてのチャレンジに近い。だからこそ難しさもあるんです。

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長谷部:それは提案次第で道はあると思います。たとえば「週1だけでもそのプロジェクトに関わる」ような形で、部署をまたいで配置することは、これまでも前例があります。
むしろ、そういう主体的な職員が出てきてくれるのは本当に嬉しいことです。

 

 佐々木:是非、そういう職員の応援をお願いしたいと思います。

社会性と経済性を両立する企業の挑戦

加生:企業側の変化も大きいですよね。地域貢献とビジネスが両立できるのか──その問いに10年向き合い続けてきましたが、最近はその両輪がうまく回り始めている気がします。

佐々木:まさにその代表が渋谷に70年以上本社を構えるシリコーンの専門商社のニッシリさんです。5期から継続的に参加してくださって、地域とつながることで人材育成やビジネスにも繋げるケースが出てきています。

会社としても活動を全面バックアップしてくださり、「やりたいことをやっておいで」と送り出してくれている。だからこそ本人たちもプロジェクトに自信をもって取り組み、社に持ち帰ったときにもきちんとビジネスにつなげられている。

最近では御殿場と渋谷をつなぐプロジェクトも始まっていて、すべて自分たちで段取り実施されています。企業が社員の越境活動にどれだけ期待し、応援できるか──そこが持続可能性の鍵だと思います。

長谷部:そういう会社があるのは頼もしいですね。

加生:渋谷区とシブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定(S-SAP協定)を結んでいる企業の中でも、ビームスさんや伊藤園さんが特に活躍してくれています。もともとS-SAP協定って、区と企業や大学が協働して課題解決を目指すという、公益性が高い取り組みなんですけど、やっぱり1対1の関係だけだと、活動が限られる。

でも「渋谷をつなげる30人」のように、複数のプレイヤーが同じ場に集まるコミュニティだと、企業同士で自然に連携が生まれて、むしろ区は「応援するだけ」となるケースも増えてきました。

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