加生:最初の2〜3年は、私たちも試行錯誤の連続でした。当初からアウトプットを出すこと以上に、「街の同級生」というフラットな関係性の構築がまず重要だと考えてきましたが、3年目に差しかかる頃、「それで何が生まれるの?」「どんな社会的インパクトがあるのか?」という問いを投げかけられる機会も当然増えてきて、正直焦りもありました。

その中で生まれたのが「落書き消しプロジェクト」でした。
▷参考:https://forbesjapan.com/articles/detail/27953
行政がなかなか手を付けられていなかった落書きという街の困りごとに対して、民間とNPOが連携して楽しみながら解決し、結果的に、落書きを3年間で一掃する区の事業へと発展しました。
長谷部:これは本当に象徴的な取り組みだったと思います。
街の課題に向き合う人たちがコラボレーションして、行政と共に課題解決を担う。そこに新しい価値が生まれたと思います。
渋谷モデルは全国へ。そしてSHIBUYA CITY FCとの共創へ
加生:このような取り組みに様々な都市が魅力を感じてくれて、コロナ禍に名古屋、横浜、京都、広島などの政令指定都市に次々と広がっていきました。最近では、小松や福島のようにまとまった予算がなくても自主的に始めたいと名乗り出てくれるエリアも増えており、一般社団法人つなげる30人が「つなげる30人リーグ」を主催して、エリア同士のピアサポートを支援しています。
ただその一方で、私が全国展開に力を入れるあまり、私の渋谷へのコミットメントが当初の「オンリーワン」から全国の中の「ワン・オブ・ゼム」になってしまっていたため、渋谷区をホームタウンとするサッカークラブSHIBUYA CITY FC(以下、FC)に代わりに主催を担ってもらえないか相談を始めました。
酒井 翼(以下、酒井):僕らは4期(2019年)・5期(2020年)と「渋谷をつなげる30人」に参加させてもらって、そこでのつながりが本当に大きかったなと思います。
2022年、加生さんから「FCが主体となって引っ張ってくれないか」と声をかけてもらった時、ちょうどスポンサー企業が200社近くまで広がっていたタイミングでもあり、「新たな価値提供の場になる」と感じました。
区内で関わりたがっているけどきっかけがなかった企業の受け皿にもなると考えて、すぐに「やらせてください」とお返事したと思います。

長谷部:あっという間に中心的な存在になってくれましたよね。「渋谷をつなげる30人」だけでなく、渋谷区の施設である千駄ヶ谷SCCコミュニティセンターの指定管理に手を上げていただいて、現在は指定管理者として渋谷区のコミュニティ形成に尽力いただいています。
渋谷区内で信頼関係を構築しながら、次々に人や資源をつないでいく感じが頼もしく思います。
酒井:これまでスポンサーに提供していた価値って、ネットワーク紹介とかPR活用が中心だったんです。でも、「渋谷をつなげる30人」という“共創の箱”があることで、企業の皆さんが地域に入り込み、当事者として動けるようになった。そこから新しい出会いや仕事も生まれて、「渋谷の会社」としての見え方も変わっていったと思います。



