2016年に始まった「渋谷をつなげる30人」は、企業・行政・NPOなど異なる立場の人々が対話と共創で地域課題に挑む、全国でも先駆的な取り組みだ。10年の歩みの中で、セクターの垣根を越えて、まちの未来を自ら動かす文化が渋谷に根づき、今では全国各地にその潮流が広がりつつある。
「果たしてクロスセクターコミュニティは都市にとってどんな価値があるのか」そんな問いを、構想当初から関わってきた発起人・加生健太朗、そして実行委員メンバーが一堂に会し、長谷部健渋谷区長とこの10年間のリアルな軌跡と手応えを語った。
共に「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を創っていきたかった。
加生健太朗(以下、加生):本日はお忙しい中ありがとうございます。「渋谷をつなげる30人」がスタートして今年でちょうど10年。2016年に立ち上がった当初から、長谷部区長はじめ渋谷区の理解と協力なくして、ここまで来ることはできませんでした。本当にありがとうございます。
前編ではこの10年を振り返りつつ、後編ではこれからの10年に向けた展望も共有できたらと思っています。そして、渋谷のような「共創都市」を目指す他の都市にもメッセージを届けられるような対談メッセージにできればと願っています。

まず最初に、立ち上げ当時のことを少し振り返らせてください。
10年前、「渋谷をつなげる30人」の始まりには、2つの大きな背景があったように思います。
1つは、ビジネス、NPO、行政というクロスセクターのキャリアを持たれた長谷部区長が2015年に就任され、その直後に「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を未来像とする非常にワクワクする基本構想を打ち出されたことです。
もう1つは、当時、私が所属していたフューチャーセッションズは2012年の創業以来、本社は渋谷区にあるのですが、全国の企業・行政・NPOの対話と共創を支援する中、この基本構想に共感し、自社もプレイヤーとして渋谷区のために汗を掻いていきたいと感じていたタイミングが重なったことでした。
我々なら「セクターのちがいをちからに変えるプロジェクト」が創ることができるのでは、、、これが「渋谷をつなげる30人」の原点です。
区長が初めてこのお話を聞かれた時、どんなことを期待されていましたか?
長谷部 健(以下、長谷部):区長就任時や基本構想を打ち出した際、一番の根っこにあったのは「やりたい人が、やりたいことができる街にしたい」という想いでした。
ただ、意欲だけではなかなか物事は進まない。その中で、異なるスキルや背景を持つ人たちが混ざり合って、アイデアを出し合い、実際にアウトプットまでつなげていこうという「渋谷をつなげる30人」の趣旨には、すごく可能性を感じました。

特に区の職員にとって、外のプレイヤーと主体的に交わりながら発想を形にしていくというのは貴重な経験になると思いました。
その直感は10年経って、結果的に正しかったなと思います。今では自然な形で行政の職員が共にプロジェクトを進めていて、とてもおもしろい動きだと感じています。



