エンターテインメントと制度・技術連携が促す行動変容
西和田:2026年には、GX-ETS(排出量取引制度)という、経済産業省主導でカーボンクレジットの排出権の取引が日本で正式にスタートします。27年には、大手企業は自社のCO2排出量のみならず、取引先やサプライチェーンのCO2 排出量までデータ開示しなければいけなくなります。取引先のデータ可視化となれば、大企業と取引をしている中小企業にも意識と行動の変容が広がっていくと期待されています。
CO2 排出量の削減目標を達成できなかったら、超過分を、より削減した企業にお金として支払う制度もあり、削減推進した分だけ経済的なインセンティブが得られる仕組みになっています。日本全体のCO2 排出量の約6割を占めているのが、10万トン以上排出している大企業。そこが変わることのインパクトは非常に大きいでしょう。
小林:環境問題こそ、国がトップダウンで動かしていく力がとても大事ですね。
西和田:おっしゃる通りです。国際的なコンサルティング機関の調査によると、日本人の気候変動への関心度は、海外と比較しても突出して高いのですが、行動変容にまでは至っていない。大企業の変化が個人まで広がっていくのには時間がかかるでしょうし、欧州と比較してみても日本の大きな課題だと感じています。
関心はあるけれど一歩踏み出せない、そのいちばんの理由は情報不足。「具体的に何をしたらいいかわからない」ことにあります。一人ひとりの生活者を動かす、という観点で考えれば、音楽やスポーツなどのエンターテインメントの力はとても大きいと思っています。その好事例として、ap bank fesでは、積極的に「カーボンオフセット」の取り組みをスタートしましたよね。
小林:そうですね。初年度からグリーン電力証明は取り入れていましたが、2008年には、ラオスのビール工場での省エネプロジェクトによって削減されたCO2で相殺(オフセット)する、という試みを始めました。「ap bank fes」に限らず、フェスをはじめとした音楽イベントには会場に日本全国、時には世界中から人が集まります。必然的に、交通機関の利用により大量のCO2が発生してしまう。
コロナ禍を経て「移動」の価値は高まっていますし、他人の行動を制限することはできない。そのなかで、カーボンオフセットという仕組みは現状で社会がもてる選択肢としてはとてもいいものだと感じています。「ap bank fes」で発信できたことで、“人はそもそも生きているだけで地球に負荷をかけている”ことを改めて伝えることができ、「その分、環境に優しい行動を取ろう」と考えるきっかけを、少しずつでも広げられたのではないかなと思っています。



