小林武史が本気で学ぶ、ASUENE西和田浩平の気候変動勉強会

気候関連災害で高まる危機感と、自分ごと化の必要性

小林:30代のころは音楽家として毎日スタジオに籠もってばかりで、自然の空気にすらほとんど触れない生活を続けていました。そんな僕が環境問題に目を向けるようになったきっかけが、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロでした。テロや戦争、エネルギー問題は、資本主義経済に偏重しすぎたひとつの結果であり、私たちの生活にも複雑にかかわっている。そう感じるようになり、音楽だけではなく持続可能な社会をつくるためにできることはないかと動き始めました。

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まずは知ることから始めようと、専門家や識者を講師とした環境問題に関する勉強会をスタートしたところ、講師のひとりから「事業母体として自分たちでバンクを作ってみては」と提案され、03年にap bankが立ち上がったのです。

当時を振り返ると、“地球環境に関心のある一部の人が行う、意識の高い活動”という見られ方をしていたなと思います。でもいまや、誰もが考えざるをえない、
課題の真ん中にあるのが環境問題。集中豪雨や台風の巨大化などの自然災害に、いよいよ「これは自分ごとなんだ」と思わざるをえなくなっています。

西和田:まさに、25年に発生したカリフォルニアでの山火事や、ブラジルのアマゾンでの大規模火災もそうですね。世界的な調査機関World Economic Forumが発表した「2025年の将来深刻なグローバルリスク ランキング」を見ると、短期的には気候変動以外の脅威もさまざまありますが、10年の長期で見ると、上位4つはすべて気候変動関連のリスクが占めているように、最重要なリスクと認識されています。CO2排出量を増やさないような取り組みを本気で進めなければ、2100年には世界の気温は産業革命前より2.7℃上昇すると、世界気象機関が警鐘を鳴らしています。

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環境省が出している“最悪のシナリオ”によると、2100年には東京で最高気温43℃を観測することが現実的になってしまいます。熱中症などの健康リスク、労働力の低下、台風の発生確率の上昇などあらゆる方面に影響が出てくるでしょう。

小林:いつ、どこに、大規模な被害をもたらす災害がやってくるかがわからない。危機的な状況が、世界中で続いていますね。

西和田:自然災害の発生により、例えばアメリカでは、気候変動関連の保険損害は40年前と比較して右肩上がりに上昇し、いまや5倍まで膨れ上がっています。「また同じ場所で山火事が起きるだろう」と保険会社はリスクを考えて高額な保険金額を設定することになり、その地域に家を建てたくても高額な保険料がネックになって断念せざるをえない人が出てきます。そうして、世界中で、特に影響を受けやすい途上国で住める場所がどんどんなくなってしまうでしょう。

小林:気候変動の主な原因となっているのは、経済先進国がもたらした環境破壊です。それなのに災害は、これまで自然とともに自然に優しい暮らしをしていた途上国の地域も襲っているという皮肉があります。

ap bankの活動と並行して、環境と消費を考える“実践の場”として、2005年に都内に「kurkku」プロジェクトを、19年には千葉県木更津市に「KURKKUFIELDS」を立ち上げました。約30ヘクタールの敷地内では、有機農産物づくりや宿泊施設の運営のほか、計2.4MWの発電量を誇る太陽光発電所を設置し、電力の“地産地消”も行っています。

「これから農業をやりたい」という若い世代のスタッフも多く働いていて、中には、「以前は環境問題にまったく興味がなかった」という人もいます。聞くと、留学に行ったオーストラリアで同世代の友人が気候変動をテーマに自然と議論している様子に感銘を受けたのだそう。彼らの熱意に触れていると、未来に希望が持てます。

「気候変動によって暑さからは逃れられない。それならば朝と夕方のみの農作業で効率化できる仕組みをつくろう」とアイデアを形にすべく日々奮闘していて、今から自分たちに何ができるか、という思考がとてもすてきです。でも、彼らがどんなに工夫していても、そこを襲う大雨や台風などの異常気象を動かすことはできない。CO2 削減がいかに重要なテーマかを感じています。

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