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2025.07.18 13:00

米GMが「AIデータセンター向け」バッテリー事業を強化、EV向け需要の減速で

Shutterstock.com

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トランプ政権の新たな政策は、米国の電気自動車(EV)向けバッテリーの需要を低下させる見通しだ。デトロイトに本社を置くゼネラル・モーターズ(GM)はこれを受け、電力網や人工知能(AI)データセンター向けなど、EV以外へのバッテリー活用に乗り出した。

米国内の工場でEV向けバッテリーの生産に数十億ドル(数千億円)を投じてきたGMは7月16日、レッドウッド・マテリアルズと提携し、自社製バッテリーセルの一部を電力網やAIデータセンター向けの定置型エネルギー貯蔵システムに活用すると発表した

GMは、すでにリサイクル用のバッテリースクラップをレッドウッドに供給しているが、今後は米国内で生産された新品および使用済みのバッテリーセルを同社に提供する。レッドウッドは、これらのバッテリーセルを、大型の定置型パックとして組み立てると述べている。

レッドウッドは、テスラ共同創業者のJB・ストラウベル現取締役がネバダ州リノを拠点として設立した企業だ。同社は先月、「レッドウッド・エナジー」という新部門を立ち上げて、エネルギー貯蔵用パックの供給を開始している。

「電力網向けの大型バッテリーやバックアップ電源の市場は、拡大しているだけでなく、必要不可欠なインフラとなりつつある」と、GMのバッテリー責任者カート・ケルティは述べた。「電力需要は増加しており、今後さらに加速していく」。

電力網や定置型エネルギー貯蔵システムが第二の市場として加速

EV以外にもバッテリーセルの用途を広げることで、GMはこの技術に対する研究開発や生産への投資を最大限に活用できる。この背景には、トランプ政権が7月4日に成立させた大型減税法案「ワン・ビッグ・ビューティフル法(One Big Beautiful Bill Act)」に象徴される政策によって、EV販売だけでなく、大規模な風力・太陽光プロジェクトの見通しも暗くなっていることが挙げられる。

二酸化炭素(CO2)排出が少ないクリーンエネルギー技術の新たな用途を追求することは、多くの投資家が企業に期待している方向性でもある。

「環境テクノロジーは、グリーンからカーキ色になったと言われるのは、この分野の取り組みが、もはや環境面のみの話ではなく、国家の安全保障やサプライチェーンの問題になっているからだ」と、トヨタのウーブン・キャピタルでパートナーを務めるニコル・ルブランはフォーブスに語った。「投資の観点から見ると、これら環境テクノロジーの拡大・普及によってEV市場の不確実性を軽減できる。今や、電力網や定置型エネルギー貯蔵システムという第二の市場が存在し、多くの資金の流れが加速している」。

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編集=上田裕資

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