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2025.07.17 09:30

銀価格が金を上回るペースで急上昇、ロシア中銀の買い入れが一因か

Shutterstock.com

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銀(シルバー)は、貴金属の仲間である金(ゴールド)によって長く影を落とされてきた状況から脱却しつつある。ロシア中央銀行という新たな買い手の存在により、銀価格は14年ぶりの高値を付けた。

ロシアが昨年末に初めて国家準備資産に銀を追加する計画を明らかにして以来、銀の価格は金を上回るペースで上昇している。年初から現在までの期間に、金の価格は27.5%上昇したのに対し、銀は30.6%値上がりした。この理由の1つは、過去3年間にわたって商品先物市場の主役として君臨してきた金に追いつこうとする銀の単純な動きによるものだ。

また、投資家が金への投資を一時停止している兆候も見られる。金は2022年以降、各国の中央銀行による買い入れをきっかけに民間投資家も市場に参入したことから、価格が2倍以上に急騰した。一方の銀は、中央銀行や資金力のある上場投資信託(ETF)、裕福な個人投資家といった強力な買い手が不足しており、価格上昇が遅れていた。

だが、データは限られているものの、ロシア中央銀行がひそかに銀の備蓄を増やしているのであれば、他国の中央銀行もそれに追随する可能性がある。

金を蓄積するBRICS諸国

ブラジル、ロシア、インド、中国が主導する新興国グループ「BRICS」は、ドルが国際貿易を支配する現状を打ち破ろうとしている。BRICSの計画の一部は、決済でドルを回避する方法を模索しながら金を蓄積することだが、近年では金価格が史上最高値付近で推移しているため、この戦略には莫大な費用が伴っている。

銀は「貧乏人の金」という不名誉なあだ名で呼ばれるなど、常に金の代替として見られてきた。しかし、銀を活用することで、BRICS加盟国はドルからの脱却を目指す計画を推進できるかもしれない。

堅調な工業需要も投資対象としての銀の魅力を高めている。例えば、銀がペースト状の形で前面と背面に使用される発電用太陽光パネルなどで、銀の需要が増加している。また、一部の宝飾品市場でも、高価になりすぎた金の代替品としての銀の人気が高まっている。大手宝飾品メーカーは、金を購入できない若い顧客層を狙い、銀の商品の選択肢を拡大している。だが、今日の銀市場で作用している最大の要因は投資需要の拡大とみられ、価格が上昇しているもう1つの貴金属である白金(プラチナ)とともに、金の代替品としての銀にも注目が集まっている。

金銀の価値比率では銀が割安に

銀需要の回復を示すものとして、金と銀の価値の比率を示す指標が挙げられる。歴史的に、金と銀の価値の比率は65前後で、これは1トロイオンスの金の価値が同量の銀の約65倍であることを意味する。最新の金銀の価値比率は88で、これは銀が金に比べて通常より割安となっていることを示している。金銀比率がいずれかの金属の価値を測る有効な指標であると誰もが信じているわけではないが、新たな層の買い手にとっては重要な意味を持つかもしれない。

ロシア中央銀行が昨年、金とプラチナが中心の自国の貴金属準備資産に銀を追加すると発表して以降、新たな情報は入ってきていない。だが、金と比較して銀がこのところ好調な動きを見せていることは、銀市場で中央銀行の動きが活発化していることを示唆している可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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