カップルに関係を良好に保つ秘訣について尋ねると、おそらく次のような答えを耳にするだろう。十分な意思疎通、価値観の共有、身体の親密さ。笑いも挙げられるかもしれない。だが、めったにリストアップされることはないが、2人の関係が成長するかどうか、あるいは関係が単に続くかどうかを密かに決定づける感情面における1つのスキルがある。
「感情の主権」だ。
それは決して派手なものではない。だが、カップルが一度このスキルを活用し始めると、喧嘩の仕方から絆を取り戻す方法、お互いの存在で得られる安心感まで、すべてが変わる。
感情の主権とは
心理学者で感情的知性(EQ)を研究するエマ・セパラによると、感情的知性の高い人は、セパラが「感情の主権」と呼ぶ重要なスキルを持っている傾向があるという。つまり、感情を避けたり抑圧したり、麻痺させたり、あるいはとらわれたりするのではなく、ブレることなく賢く感情を処理することを学んでいる。
恋愛関係において感情の主権は、自分の気分や特定の反応を引き起こす要因、自分の価値感を相手任せにすることなく、感情を主体的に保つ能力として現れる。感情の主権は以下のような内に秘めた自信だ。
・「私はあなたを責めることなく、自分の感情を受け入れる場所を確保できる」
・「私はあなたに対処してもらうことなく、違和感を持つことができる」
・「自分を失うことなく、あなたを深く愛せる」
感情の主権とは要するに、自分の感情の状態に責任を持つ能力のことだ。
感情の主権が見過ごされているわけ
感情の主権が見過ごされているのは、目に見えないからだ。
会話に見られるコミュニケーションスキルや、行動に表れる尽くす行為とは異なり、感情の主権は内面的なものだ。暴言を吐く前に自己反省する、感情を相手に次々とぶつけるるのではなく自分で感情を律する、といった反応する前の「間」を意味する。
知的で思いやりがあり、献身的なカップルでさえ同じ議論を繰り返すことが多い。これはなぜだろうか。対立の根底に「私の気持ちの責任はあなたにある」という暗黙の前提があるからだ。
そうした思い込みがある場合、感情の主権が大きな違いを生む。
感情の主権の実践で変わるもの
1. 対立が激化しなくなる:例えば発する言葉が、「あなたのせいで見捨てられたと感じた」ではなく、「そのとき私は見捨てられたと感じた。それを深く理解したい」となる。その小さな言葉の変化(「あなた」から「私」へ)は所有権の大きな変化を反映している。非難はなくなり、代わりに追求心が生まれる。
だがその変化の影響は、非難を避けるというよくあるアドバイスにとどまらない。実際、研究によると、「私」を主語とする言葉の威力はパートナーの気持ちを穏やかにするというより、あなたの姿勢が異なるものになることにある。
「私」を主語とする言葉の使用は感情の調整に役立ち、自己防衛を減らし、攻撃するのではなく、積極的に関わろうとする意思を示す。このような内的な変化は対立を収拾のつかないものにせず、より建設的なものにする。



