そのために同社が取り組んでいるのは、ユーザーとの接点の拡張だ。全国11,000店舗を超える取扱店に加え、家電量販店や百貨店での体験イベントも累計5万回以上実施。さらにウォーターサーバー企業との連携や、ドリンクメーカーとのコラボなど、日常生活のあらゆるシーンに“つくる飲料”を広げている。
生活習慣の変革というテーマでは、食文化との接続も重視している。たとえば、ハイボールや焼酎の炭酸割りだけでなく、炭酸水でご飯を炊くとふっくら仕上がることに着目したプロモーションを展開。近年では「炭酸水でメタボ対策」という新たな切り口で健康意識層へのアプローチも始めており、味覚・健康・利便性を三位一体で伝える戦略が浸透しつつある。
生活に密接したエシカル志向の戦略は、ビジネスの強化という観点からも理にかなっている。近年、採用の場面でも企業のミッションへの共感が志望動機として語られることが増えており、優れた人材の獲得にもつながっているという。「エシカルであることは、もはや社会貢献だけにとどまらない、企業の成長戦略です」と平野は言う。
かつては贅沢品として上流階級に親しまれた炭酸水。それが今、サステナブルな社会の実現を支える日用品へと姿を変えつつある。ソーダストリームのビジョンは、「あたりまえ」を変えること。飲料業界の常識に疑問を呈し、人にも環境にもより良い選択肢を提供することから、地球規模の課題解決につなげようとしている。
ソーダストリームが生まれた1903年の英国は、紅茶と銀器の時代だった。気品ある生活を形づくることが、階級の証であり、文化の誇りでもあった。 それから120年、暮らしのなかの「泡」は、所有から共感へ、そして贅沢から倫理へと意味を変えた。
ベンジャミン・ディズレーリ──ヴィクトリア朝時代に英国の繁栄を築いた首相のひとり──は、かつてこう語っている。「変化は人生の法則である。過去や現在しか見ない者は、未来を見失うだろう」。
ソーダストリームが今問うのは、まさにその「変化の選び方」だ。生活を変えることは、消費の形を変えること。そして、それは経済の未来を形づくることでもある。
ソーダストリーム
https://www.sodastream.jp/


