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2025.07.16 12:00

中国のデータセンター株が急騰、エヌビディアが「H20」の対中販売再開で

Shutterstock.com

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中国のデータセンター事業者の「レンジ・インテリジェント・コンピューティング・テクノロジー・グループ」の株価は、7月15日の市場でエヌビディアがAIアクセラレーターの「H20」の対中輸出を再開するとの発表を受けて一時9.8%急騰した。これにより、同社会長でビリオネアの周超男が保有する資産が大きく上昇した。また、エヌビディアの突然の方針転換は、中国のデータセンター株全般を押し上げる結果にもなった。

深セン市場に上場するレンジ・インテリジェントの株価は現在1株あたり51.6元(約1032円。1元=20円換算)で、フォーブスは、同社の持ち株に基づき、周の保有資産は58億ドル(約8642億円)と推定している。深センや香港に上場する他のデータセンター関連の企業の株価も上昇しており、ベイジン・シンネット・テクノロジーは6.6%高、Kehua Data は7.5%高、GDSホールディングスは10.2%高を記録した。

「エヌビディアの対中販売に対する制限が緩和されれば、中国におけるAI開発は加速するだろう。その結果、データセンターへの需要も増加する」と、北京に拠点を置く投資銀行Chanson & Co.のマネージングディレクターのシェン・モンは指摘した。

香港に拠点を置くエバーブライト・セキュリティーズのケニー・エンによれば、エヌビディアのH20チップでAIデータの処理を行っていた中国のデータセンター事業者は、同等レベルの国産代替品を見つけられず苦戦していたという。エヌビディアが突如発表したこの方針転換によって、投資家のこのセクターの成長見通しに対する信頼が高まったとエンは指摘した。

トランプ大統領との会談後に発表

エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、14日の発表で、同社がH20チップの対中販売に必要な米政府のライセンスを再取得する見込みだと明かした。このチップは、すでに米国の対中半導体輸出規制に準拠するよう性能を抑えたものとなっているが、4月にさらに厳しい制限に直面していた。

エヌビディアはその当時にトランプ政権が先端AIチップの対中輸出規制を強化したことにより、55億ドル(約8195億円)の評価損を計上していた。今回の劇的な方針転換は、ファンCEOが先週ドナルド・トランプ大統領と会談した後に発表されたもので、彼は16日に北京でサプライチェーン博覧会に参加予定だと新華社通信は報じている。

エヌビディアは、「米政府は当社に対するライセンスの付与を確約しており、当社はまもなく出荷を開始したいと考えている」と明らかにしている。

米中貿易戦争の交渉材料として使われる可能性も

Chanson & Co.のシェンは、今回の米国の方針転換がトランプ政権がH20の販売再開を中国との交渉材料として利用しようとしていることの表れではないかと考えている。今年初めに米中は、一応の貿易戦争の休戦に合意したものの、中国がレアアースの販売の承認を意図的に遅らせているなど、依然として多くの対立点が残されている。

レアアース磁石は自動車からロボットまで幅広い産業で使用されているものの、その生産は中国が事実上独占している。そのため中国による輸出規制によって、世界中の工場生産が混乱を起こしていた。イーロン・マスクもこの4月には、中国のレアアースの輸出制限が、テスラの人型ロボット「オプティマス」の生産の打撃となったと述べていた。

「米国がエヌビディアの製品を規制しようとしまいと、中国のチップ技術の発展を止めることはできない。今回の政策変更は、貿易摩擦を緩和し、レアアースの輸出制限の解消にもつながる可能性がある」とシェンは指摘した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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