AI

2025.07.16 15:15

Boxアーロン・レヴィCEOが語る創業20年、日本、AI時代の課題と可能性

━━かつて企業で扱うデータは文書が中心だったと思いますが、世の中では音声やビデオへと移行しています。同様に、顧客が保存・管理するコンテンツやデータに変化はありましたか? 

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レヴィ:ええ、じつにいろいろな種類のファイルタイプが保存されています。多岐にわたり、かなり面白いですよ。ユーザーは文書や動画のほか、音声ファイルや画像とも“対話”できるようになります。

━━経営する立場として難しいのは、製品を市場に投入するタイミングだと思います。焦ると後から考えれば明白だった「AIセーフティ」の穴を見落としてしまうかもしれません。しかし遅すぎると、今度は競合に後れを取ってしまう。AI時代のテック企業CEOとして、どのように舵取りしていくのでしょうか?

レヴィ:そのとおり、本当に難しいですよ。ただ重要なのは、然るべきブレイクスルーをすべて生み出し続けることです。Boxは、世の中に受け入れられる準備が整っていないという判断から、まだ世に出ていない技術にアクセスできます。そうした技術や製品の開発は続けるものの、公開の準備ができるまではリリースしないかもしれません。それでも、大事なのは市場の先を行くことです。だから、その技術を確実に手元に置いておく必要があります。

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今が最もエキサイティングな瞬間ですよ。私は25年間ソフトウェアに携わってきましたが、間違いなくいちばん興奮しています。目の前で起きているイノベーションは、信じられないほどで素晴らしい。そのすべてが、です! 毎朝、出社して、我々が取り組んでいる製品を目にすることに、本当にワクワクしています。

━━起業家はしばしば「自分は、正しいときに正しい場所にいた」と話します。ご自分を“幸運”だと思いますか。それとも、ようやく自分の“先見の明”が証明されたと感じますか? 

レヴィ:その両方でしょうね。正しさが証明されたというのは、我々がここまで来るために多くの良い決断を下してきたからだと思います。幸運だったというのは、我々にまったく予測できなかったような多くのことが、「非構造化データ」の周りで起きているからです。それは我々が想像していたよりもはるかに大きなかたちで起きています。だから、極めて幸運ですよ。いくつかの技術の進歩は、コントロールできなかったものですからね。AIの開発・運用コストがこれほどのペースで下がるのは予測できませんでしたから。

「トランスフォーマー論文」が書かれていなかったシナリオを想像してみてください(編集部註:生成AIの基礎理論を提唱した「Attention is All You Need」論文)。AIの作り方を知る企業が一社しかなく、競合が存在しなければ、コストは高額になっていたでしょう。BoxもAIを実装できなかったはずです。でも論文が公開されたことで大規模言語モデル(LLM)が発展し、OpenAIのGPTシリーズ、AnthropicのClaude、GoogleのGemini、xAIのGrokのような最先端のAIモデルが開発されたのです。

その結果、Boxのようなソフトウェア開発企業がその技術を自社プラットフォームに組み込むことができた。これは純粋な幸運ですよ。我々は、いっさい関与していなかったわけですから。だから、本当に幸運だったと思います。AI市場はそのようにして成長したわけです。そして、それが極めてエキサイティングな理由でもあるわけです。

文 = 井関庸介 写真 = 能仁広之

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