━━競合他社と連携する「ベスト・オブ・ブリード」戦略は今も有効のように思えます。とはいえ、環境が激変しているのも事実です。そして創業期とは異なり、Boxはすでにグローバルプレイヤーであり、今後はスタートアップとの競争にも直面するでしょう。大企業グループでの立場を維持しつつ、スタートアップとの関係をどのようにコントロールしていくお考えでしょうか？
レヴィ：Boxは常に開かれたプラットフォームでありたいと考えています。顧客が利用したいと望むあらゆるAIプラットフォームと統合し、つながっていきますよ。Salesforce（セールスフォース）の「Agentforce」やServiceNow（サービスナウ）の「AI Agent Fabric」のように、顧客が活用するすべてのソフトウェアと統合できれば、と。すべてのAIシステムに接続しつつ、OpenAI（オープンAI）やAnthropic（アンソロピック）、Google Gemini（グーグル・ジェミニ）、xAI「Grok（グロック）」など、その他すべての主要なAI技術を取り込んでいこうと考えています。
━━NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2025年1月のCES（国際テクノロジー見本市）で、「Agentic AI（エージェンティックAI）」の時代を経て、最終的には物理世界を理解し、推論し、計画し、行動する「Physical AI（身体的AI）」の時代へ移行していくと語っています。AIを実装しているSaaS企業のCEOとして、AI開発においてどの程度の段階にいると思いますか？
レヴィ：まだ本当にごくごく初期の段階だと思います。信じられないほど早い段階でしょう。私の予測では、10年後に私が東京に来ても、「企業がいかにして組織全体でAIを本格的に導入し、多くの業務やワークフローを変革しているか」と話しているはずです。10年後も似た状況が続いていると確信しています。2年で完了して次に進む、とはならないでしょう。
10年後も「あの業務は自動化できるね。次はあの部署を自動化しよう。それが済んだら、今度はこちらでできることを拡張しよう」といったことを企業が絶えず繰り返し、進化し続ける環境になるのではないでしょうか。「何かが変わって、何かが達成された」という繰り返しが、組織にとって当たり前の働き方になるはずです。
━━10年後も今と変わらず、仕事ではパソコンやノートパソコンといった端末がメインで使われていると思いますか？
レヴィ：そう思いますね。
━━アプリケーションであるBoxはさまざまなデバイス上で動作します。VR（仮想現実）、AR（拡張現実）、MR（複合現実）などのXR（クロスリアリティ）領域における端末、例えばアップルの「Apple Vision Pro」のように、これからはAI時代に特化した端末も出てくるでしょう。そういった技術革新も念頭に開発を進めるのでしょうか？
レヴィ：Apple Vision Proに関して言えば、すでにアプリがあります。顧客が望むあらゆるデバイスに対応するつもりです。とはいえ、持ち運び可能なコンピュータ画面というフォームファクタは、10年後も依然として重要でしょう。もちろん、メガネ型デバイスにはワクワクしていますが、コンピュータに取って代わるかどうかはわかりませんね。
重要なのは、会議ビデオや契約書、研究文書など、企業内のすべての文書、こうしたデジタル成果物は、いまやクラウド上にあることです。こんな光景を想像してみてください。メガネ型デバイスをかけて「製品ロードマップの最新情報を教えて」と言うだけで、Boxという“企業版メモリーバンク”に保存されているすべての情報と対話し、答えを返してくれるのです。Boxとしてはどんなフォームファクタでも問題ありません。音声でも画像でもいい。あらゆる環境に対応しますよ。AIの素晴らしい点は、まったく異なるフォームファクタで作業する能力を与えてくれることですから。
