AI

2025.07.16 15:15

Boxアーロン・レヴィCEOが語る創業20年、日本、AI時代の課題と可能性

━━今振り返ると決定的だったBoxにとっての分岐点とは。

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レヴィ:最大の転換点は、創業から2年目くらいの消費者・個人向けからエンタープライズ向けに舵を切ったときでしょうね。それが最大の分岐点、いわゆる「ピボット」だったと思います。そのときから、顧客が非構造化データや情報を最大限に活用できるよう支援することに集中してきました。この18年間、その方針から逸れたことはありません。今も、そのための最高のプラットフォームを構築し続けようとしているだけです。

━━競合にどういった会社を念頭に置いていますか? かつてはDropbox(ドロップボックス)のような明確な競合がいましたが、今は市場そのものが複雑化したように思えます。

レヴィ:マイクロソフトやグーグルのような巨大企業でしょうか。効率よく迅速に動くスタートアップのことも意識していますよ。競合が混在している状況で我々が重視しているのは、「競合より速く動けるか?」「競合よりイノベーションを起こせるか?」「競合より高いバリュー・プロポジション(価値提案)を提供できるか?」という点です。そういった点のほうにフォーカスしています。

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━━AIという技術が当たり前になった今、経営面ではどういった難しさを感じていますか?

レヴィ:この領域の進歩のペースがとてつもなく上がっていることですね。

━━プレッシャーを感じるとすれば、それは顧客の期待によるものでしょうか、それともシンプルに技術の進歩から来るものでしょうか。

レヴィ:シリコンバレーにいること自体がプレッシャーですよ。すべてが圧倒的なスピードで変化していくのを目の当たりにしていますから。そのスピード感ゆえに、いつも後れを取っているように錯覚してしまいますね。

Windsurf(ウィンドサーフ)やCursor(カーソル)、Replit(レプリット)のようなAIツールがどれだけ速くイノベーションを起こしているか、肌で感じるわけです。「どうすればBoxにもできるか? 企業規模が大きくてもスピーディに動くには?」と、考えさせられます。顧客は、我々にもっと速く動くよう求めているのは間違いありませんからね。今、AIのイノベーションがものすごい勢いで進んでいるので、顧客以上に、業界が私たちを動かしているんだと思います。

━━10年前は、Hack Reactor(ハック・リアクター)や Codeacademy(コードアカデミー)のようにコーディングを教えるソフトウェアエンジニア育成企業を取材したものですが、今では誰もが「Vibe-coding(バイブコーディング)」について話しています(編集部註:AIを活用して、自然言語で指示するだけでコードを生成し、アプリケーションを開発する新しいプログラミング手法)。ノーコード・ローコードは浸透しつつあります。

レヴィ:自分がコーディングし始めた高校生の頃を思い出さずにいられませんよ。今あるツールを使えたら、きっと一日中コンピュータの前を離れずにひたすらコーディングしていたでしょうね。WindsurfやCursor、Replitで、誰でも信じられないほど簡単にソフトウェアを開発できるようになりました。テクノロジーに興味がない人たちも開発できるようになったわけですから。

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文 = 井関庸介 写真 = 能仁広之

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