AI

2025.07.16 15:15

Boxアーロン・レヴィCEOが語る創業20年、日本、AI時代の課題と可能性

AI(人工知能)の台頭により、テクノロジー企業間の競争が今まで以上に激化している。進化し、時代に適応できた企業だけが生き残るなか、2005年創業の「Box(ボックス)」は、クラウド時代を牽引するオンラインストレージ企業からコンテンツ管理プラットフォームへと進化を遂げるなど、かたちを変えて成長してきた。

創業者として立ち上げた会社を20年間もCEO(最高経営責任者)の立場で率いるのは並大抵のことではない。しかしBoxのアーロン・レヴィCEO(40・写真)は、インタビューで過去をノスタルジックに振り返って語るのを好むようなタイプではない。当然、その目はすでに次を見据えている。

2016年のForbes JAPANのインタビューで、レヴィは「(日本の)伝統的で縦社会とされる文化を、もっとフラットでオープンでコラボラティブ(協同的)なものに変えたい」と語った。Boxにとっての企業ミッションであるとはいえ、生産性を上げれば日本企業は飛躍するはず、という彼の思いは本物だろう。それはAI時代も変わらない。

任天堂とオニツカタイガーの製品をこよなく愛し、京都をはじめ日本各地への訪問を楽しみにしているレヴィが、現在は一瞬たりともシリコンバレーを離れられない理由とは。AIエージェントの台頭で、21世紀を代表する課題になる「Agent Security(エージェント・セキュリティ)」とは何か。AIが日本にもたらす可能性と未来についてレヴィが語った。


━━Boxはかつてオンラインストレージ企業でしたが、環境や技術の進歩と共にコンテンツ管理プラットフォームへ進化しています。創業からの20年間で、変わったこと、そして変わっていないことについて振り返っていただければ。

アーロン・レヴィ(以下、レヴィ):変わったことよりも、変わっていないことのほうが多いように思いますね。私たちにとって今も大事なのは、顧客がコンテンツにある情報を最大限に活用できるように支援するプラットフォームだという点だからです。

Boxは、徹底的にプロダクト重視の会社です。私が以前と比べて日本に長く滞在できないのは、シリコンバレーの本社でチームと一緒にプロダクト開発、戦略づくりとその遂行に多くの時間を費やしているからです。私たちは今でも迅速に動こうとしています。小さかった頃のスタートアップ精神のまま、本気でイノベーションを進めようとしています。プロダクト開発にも高い基準を課しています。本質的にそういった点は変わっていません。

変わったとすれば、より野心的になったことでしょうか。創業当初の目標は、「ファイルへのアクセス、共有、共同作業を可能にする最高のプラットフォームを構築すること」でした。AIの登場により、できることがはるかに大きくなりました。

なぜなら、データがデジタル化されたことにより、いわば企業データを集積した“デジタル・カプセル”が生まれたからです。その企業データを、AIエージェントが活用できる価値の源泉へと変えられます。顧客は自社の情報を理解し、ワークフローを自動化することが可能です。だからAIで我々も野心的になり、実行するスピードも上がっているわけです。

━━創業当初から頭の片隅にAIを想定したビジョンはあったのでしょうか。

レヴィ:いや、創業当初はそれほど深く考えていませんでしたね。AIを意識し始めたのは、情報の検索・発見で機械学習(ML)を使う流れの中だったと思います。創業から数年が経ってデータが蓄積されていくにつれ、それが事業を把握する強力なインサイト(洞察)の源泉になり得ると気づいたのです。

次ページ > 今振り返ると決定的だったBoxにとっての分岐点

文 = 井関庸介 写真 = 能仁広之

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事