アップル、シスコと提携し業務利用推進 iPadの売上増も期待

jannoon028 / Bigstock


アップルとシスコは8月31日、業務提携を発表。iOS製品をシスコの企業ネットワークに組み入れ、iPhoneやiPadをシスコの業務ツールと連携させるプランを発表した。これには音声やビデオ会議のサービス等が含まれる。

今回の取り組みにより、iPhoneやiPadのエンタープライズ利用を推進。6四半期連続で低下したiPadの売上向上も狙えそうだ。

「アップルはコンシューマー向けの市場は制覇したが、企業向け領域ではまだ伸び代がある。長いスパンで見ると、アップルは企業の仕事の流れを一から立て直すことを目指しているのだ」と、ムーア・インサイツ・アンド・ストラテジーの主席アナリスト、パトリック・ムーアヘッドは語った。

今回の提携の技術的詳細は不明だが、「両社にとって主要課題の一つがシスコのSparkとWebEx製品群の連携になる」とムーアヘッドは言う。シスコはiOSアプリをリリースしてはいるが、TwitterやFacebook、FacetimeほどにはOSとの連携は強くない。ムーアヘッドは「OSベースのソフトウェアのほうがより快適なユーザビリティを実現できる」と述べた。

また、別の領域としてはシスコの業務用電話製品が挙げられる。「両社はiPhoneが職場の電話に置き換わる存在となることを実現できる」とムーアヘッドは分析している。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「両社のコラボは10ヶ月に及ぶ話し合いの結果だ」と報道している。ティム・クックはWSJに対し「シスコとの提携で、我々の業務は新たなステップに向かう」と述べている。

ティム・クック指揮下で、アップルはエンタープライズ領域への進出を加速させてきた。昨年、アップルはIBMと提携し、企業向けアプリの開発を開始した。ここ最近では40社以上のテクノロジー企業と連携し、iPadの業務利用を推進している。

クックは声明において「iOSは世界で最も優れたモバイルプラットフォームであり、Fortune 500やFortune Global 500に並ぶ企業の多くがiOSをモバイル戦略の中心に置いている。iPhoneやiPadは職場の必須ツールであり、そこに変化を起こそうとしている。シスコとの取り組みで、アップルはiOSの可能性を最大化する。従業員らが真に愛する端末を提供し、生産性を高めていきたい」と述べた。

今回の提携は、成長が鈍化したネットワーク業界の巨人、シスコにとっても良いカンフル剤になるだろう。シスコは今年5月、営業部門を率いた重役のチャック・ロビンスが新CEOに就任。それ以来、高収益部門への選択と集中を進め、大規模な従業員数削減を行ってきた。

文=アーロン・ティリー(Forbes)/ 編集=上田裕資

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