「金」と「金色」から見る新しいラグジュアリーの輪郭

渋谷ヒカリエで行われていたデザイン展『A Piece of Gold』(Photo by Asuka Ito)

正光さんが金に興味を持つようになったきっかけは、金の魅力の「普遍性」でした。

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「その材料費の高さから、作る側としても敷居が高く、はじめの一歩が重かった。しかし、実際に扱いはじめてみると、加工のしやすさや、アレルギー反応のおきづらさ、ケアしやすさなど、なぜこんなに価値があるのかを改めて実感できた。そして、置いておくだけで高揚感がある。人をそんな気にさせられるのは金しかないと思った」

金は数十億年前、宇宙の超新星爆発で誕生した素材。いま私たちが手にする金は、少なくとも数十億歳であり、約46億年以上前に地球に取り込まれた宇宙の残骸の一部であると言えます。

「お金持ちのイメージではなく、夢やロマンなどもっと希望のあるイメージがあっても良いはず」と正光さん。

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壮大な物語には共感できなくても、完全にリサイクルが可能であり、何代にもわたって形を変えて循環することができるという実感のある価値に、新たな意味づけをしていくことは可能なはずです。

正光さんは、EMBROIDERYが生まれたきっかけには出産があったといいます。図案の考案により時間をかけつつも、実際の作業は最新のレーザー溶接機を導入することで、子守りをしながらでも即興的に制作をする。そのなかで、従来の彫金にはないオリジナルの手法が生まれ、独自の表現に辿り着いたのです。

「いかに限られた材料・時間・条件で新しいことを作り出せるか、という挑戦に面白さを感じる。自分の環境の変化でデザインが変化していくことは楽しいですよね」

そう着飾ることなく語る正光さんの姿はとても印象的でした。安西さん、もし思い出されるエピソードなどあれば、ぜひ教えてください。

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文=前澤知美(前半)、安西洋之(後半)

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