音楽

2025.07.21 16:00

あれから40年、音楽イベント「ライブ・エイド」が変えたチャリティーと社会

1985年7月13日、英ロンドンで開催されたライブ・エイド・コンサート(Dave Hogan/Getty Images)

1985年7月13日、英ロンドンで開催されたライブ・エイド・コンサート(Dave Hogan/Getty Images)

40年前の1985年7月13日、英ロンドンと米フィラデルフィアで同時に開催されたアフリカの飢饉救済のためのチャリティコンサートの「ライブ・エイド」は、音楽業界だけでなく世界に大きな影響を与えた歴史的イベントして記憶されている。このイベントは後に「20世紀最大のチャリティーコンサート」と呼ばれるようになった。

ロンドン郊外のウェンブリースタジアムと、フィラデルフィアのJFKスタジアムを会場としたこのコンサートは、世界の大物ポップスターのライブを16時間にわたってテレビで生中継し、110カ国以上の10億人以上が視聴したとされる。その結果、1億2500万ドル(約184億円)以上の寄付金が集まった。

ジョージ・マイケル、U2のボノ、クイーンのフレディ・マーキュリーなど、グランドフィナーレのステージに登場したスターたち (Photo by Kent Gavin/Mirrorpix/Getty Images)
ジョージ・マイケル、U2のボノ、クイーンのフレディ・マーキュリーなど、グランドフィナーレのステージに登場したスターたち (Kent Gavin/Mirrorpix/Getty Images)

アフリカの飢餓救済にミュージシャンが結集

1980年代のテレビや新聞では、アフリカにおける人道的な危機や、特にエチオピアでの飢餓のニュースが盛んに報じられていた。当時のアフリカは干ばつと20世紀で最も長引いた内戦の影響で、深刻な食糧不足に陥っていた。国連によれば、エチオピアでは1980年代半ばまでに100万人以上が飢饉で亡くなったとされる。

このニュースが人々の心を動かした。その中の1人であるブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフは「何かをしなければ」と感じ、チャリティーソングの制作を思い立った。そして生まれたのが、1984年の「バンド・エイド」と呼ばれるスーパーユニットだった。U2のボノやフィル・コリンズ、ボーイ・ジョージ、デュラン・デュランのサイモン・ル・ボン、ジョージ・マイケル、スティング、ジョディ・ワトリーといった面々が参加したこのバンドの楽曲『Do They Know It’s Christmas?』は大ヒットし、200万枚以上を売り上げ、数百万ドルの寄付金を集めた。

しかし、ゲルドフがこの楽曲の収益のすべてを、飢饉の救済に使うと約束した後、英国政府はこのシングルの売上にかかる付加価値税(VAT)の免除を拒否した。アイルランド政府はこの税金を免除したが、英国政府は税の徴収を続けたのだった。

当時の英労働党党首ニール・キノックは、バンド・エイドの売上にかかるVATの全額を飢饉の救済に充てるよう求めたが、マーガレット・サッチャー首相は「このレコードのVATを免除してしまえば、他のすべてのケースで免除を拒否できなくなる」と反論した。

これに対しゲルドフは公然とサッチャーを批判したが、後に2人は和解し、首相官邸でウイスキーを酌み交わしたこともある。サッチャーはその後、G7の議題にも飢饉の救済の問題を取り上げて「ボブ・ゲルドフのリーダーシップの下で、音楽でチャリティ活動を行ったポップスターたちに感謝したい」と発言した。

その後、英国政府は1984年のバンド・エイドの売上にかかったVATと同額をチャリティーに寄付することに同意した。

ロンドンで行われたライブ・エイドの観客席に座る鑑賞するダイアナ妃殿下、チャールズ皇太子(Photo by Georges De Keerle/Getty Images)
ロンドンで行われたライブ・エイドの観客席に座るダイアナ妃殿下、チャールズ皇太子(Georges De Keerle/Getty Images)
次ページ > 「USAフォー・アフリカ」からライブ・エイドへ

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事