2025.07.15 16:00

スロベニアが11月に「デジタルノマド」ビザ導入へ 最新情報とポイント解説

スロベニア北部ブレッド湖(Shutterstock.com)

スロベニア北部ブレッド湖(Shutterstock.com)

リモートワークをしながら欧州で暮らすことを夢見ているだろうか? 世界中を旅しながらリモートワークで働く「デジタルノマド」が急速に拡大する中、欧州で最も過小評価されている国の1つであるスロベニアが、その夢の実現に手を差し伸べようとしている。

英大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)によると、スロベニアは11月21日からデジタルノマドビザ(査証)制度を導入する。これにより、外国の雇用主や顧客を持つリモートワーカーは、最長1年間スロベニアに居住できるようになる。現在、世界60カ国以上が何らかの形でデジタルノマドビザ制度を運用しているが、今回の措置により、スロベニアもこれに加わることになる。

スロベニアのデジタルノマドビザに関する基本情報

スロベニアのデジタルノマドビザの保持者は、同国の国外に拠点を置く企業にリモートで勤務したり、個人事業主として国外の顧客にサービスを提供したりできる。

申請にはパスポート(旅券)、健康保険、十分な資金の証明が必要となる。十分な資金とは、スロベニアの平均月収の2倍以上に相当する額だと報じられている。ビザの有効期間は1年で、更新はできない。だが、有効期間終了後にスロベニア国外で6カ月以上滞在すれば、同ビザの再申請が認められる。家族を帯同することもできるが、帯同する家族もスロベニア国外の雇用主や顧客から収入を得ている必要がある。

スペインやポルトガル、ギリシャの制度とは異なり、スロベニアのデジタルノマドビザは更新ができないため、長期滞在や市民権の取得にはつながらない。だが、スロベニアの物価は比較的安く、混雑も少なく、欧州の他の目的地への移動も容易だ。このビザの魅力は、スロベニアという国自体、そしてその国でデジタルノマドとして暮らすことのできる機会にあると言えるだろう。

女性の海外移住を支援する団体「シーヒットリフレッシュ」を設立したセピー・タビビアンは、欧州での生活を望んでいるが、長期滞在や市民権取得に伴う煩雑な手続きを避けたい外国人にとって、スロベニアが新たに導入するビザは魅力的な選択肢となるだろうと語る。筆者の取材に応じたタビビアンは、「中欧諸国の多くはデジタルノマドビザ制度を運用しておらず、現時点ではハンガリーだけだ。スロベニアが同制度を開始することは、大きな意味を持つ」として歓迎した。

なぜスロベニアがデジタルノマドの人気を集める可能性があるのか

アルプス山脈に位置する小さな国スロベニアは、イタリアやオーストリアといった隣国ほど知られていないかもしれない。だが、それこそが魅力の一部だと、米国人の海外移住支援を手がける「エクスパツィ」の設立者ジェン・バーネットは語る。バーネットは筆者の取材に対し、「当社は長年、退職者の移住先としてスロベニアを勧めてきたが、ノマド層への可能性にも注目している」と説明。「スロベニアが『次のポルトガル』になる可能性は十分にある」として、期待をにじませた。

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翻訳・編集=安藤清香

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