警鐘とチャンスの狭間
Ciscoのトゥライは、AIベンダーたちによる過激な主張の多くには、戦略的な目的があると考えている。「アンソロピック、OpenAI、さまざまなコンサルタント企業は、注目を集めたりFOMOを煽ったりするために、極端なことを言わなければならない。しかしIBMのアービンド・クリシュナCEOのように、現実的な未来像を語る人々もいる」と彼は指摘する。クリシュナは、人事などバックオフィス業務の人員について、AIや自動化によって5年以内に30%を置き換えるという方針とともに、ソフトウェアエンジニアリング、セールス、マーケティング部門の増員により、総雇用数が増加したことを明らかにした。
AIによって職が失われるのは事実だろう。しかし、その一方で、5年前には存在しなかったような新しい職種も生まれている。たとえばデータサイエンティスト、プロンプトエンジニア、AIガバナンスの専門家などだ。
アンソロピックのアモデイCEOによる発言を受けて、ビリオネア投資家のマーク・キューバンはBlueskyの投稿でこう反論した。「誰か、このCEOに思い出させてやる必要がある。かつてアメリカには200万人以上の秘書がいたことを。口述筆記のための社員までいた。彼らこそが、『置き換えられたホワイトカラー』の元祖だ」。キューバンはさらに、新しい企業と新しい仕事はこれからも生まれてくると述べて、「泣き言を言うのはやめて、準備を始めるべきだ」と続けた。
AIは、あなたの仕事を奪うのか?
ではAIは、あなたの仕事を奪うのだろうか? 必ずしもそうとは限らない。ただし、「AIを使いこなせる人」が、あなたの仕事を奪う可能性はある。専門家が強調しているメッセージは、AIをどう活用すれば業務効率が上がるのかを真に理解すべきということだ。
アヴァネスはこう述べている。「AIは、システムを最適化するためにあるのではない。人々が本当に価値あることに集中できるようにするためにある。問題は、それを我々が受け入れられるかどうかだ」
グッツァイトは、現在の状況について、世界中の働き手に向けて、AIを前提としたスキル・AIにはまねできないスキルの構築や体系化を行うよう緊急に要請するものと捉えている。「従来のキャリアの『はしご』は、その根元から断ち切られようとしている。もし今すぐ本格的な再構築や体系化に取り組まなければ、(私たち現役世代が)下の世代全体をキャリアのスタートラインにすらまともに立てなくしてしまう危険がある」と彼は警鐘を鳴らしている。


