トランプ米大統領の一族が関与する暗号資産ベンチャーの「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLF)」が、暗号資産トークンの私募販売によって5210万ドル(約76億5870万円。1ドル=147円換算)を調達し、数千万ドル(数十億円)が大統領とその家族に送金された可能性があることが、先週米証券取引委員会(SEC)に提出された開示書類で明らかになった。
暗号資産トークンにおける私募販売の経緯
トランプとその一族は、2024年9月に立ち上げられた分散型金融プラットフォームWLFの約40%を保有している。同プラットフォームは昨年10月15日に、「$WLFI」と呼ばれる暗号資産トークンの販売を開始した。このトークンは非上場企業である同社の持ち分を意味するものではないが、プロトコルに関する一部の事項についての投票権をトークン保有者に付与するもので、発行当初は譲渡不可能とされていた。
WLFが10月末にSECに提出した書類には、同社が348人の適格投資家に対して270万ドル(約3億9690万円)相当のトークンを販売済みで、総額3000万ドル(約44億1000万円)を上限に販売する計画であることが記載されていた。その当時は、売上はすべて同社内に留め置かれ、トランプや他の創業者には一切送金されないとされていた。
しかし、WLFが先週新たにSECに開示した書類によれば、同社はさらに1966人の投資家に対し5210万ドル(約76億5870万円)相当のトークンを販売し、そのうち5070万ドル(約74億5290万円)がトランプおよび他の創業者に送金された(この文書については、独立系ジャーナリストのウェンディ・ジーゲルマンが最初に報告した)。
この資金が、現行の持ち分比率に基づき配分されたと仮定すると、トランプ一族は今回の売却によって約2000万ドル(約29億4000万円)を得た可能性がある。ただし、書類には個別の配分額は記載されておらず、ウェイクフォレスト大学の証券法専門のアラン・パルミター教授は「この配分は必ずしも持ち分比率に基づく必要はない」とフォーブスに語った。
WLFはコメントを控え、トランプ・オーガニゼーションも問い合わせに応じなかった。同社は、今回のSECの開示書類で、別途行われた販売で「非米国人」に対してトークンを販売したことを認めているが、金額や購入者の詳細を明かしておらず、「米国の証券法で開示の義務はない」と説明している。
一部トークンを譲渡可能にする計画
WLFは7月9日に開示した文書で、16日に投票が締め切り予定の新たな提案で、トークン所有者らに対し、一部のトークンを譲渡可能にする計画を承認するよう求めていた。この提案は、初期支援者に販売された$WLFIを譲渡可能にすることを目的としているが、創業者やチームメンバー、トランプを含むアドバイザーが保有するトークンは、当面ロック状態が維持され、初期支援者よりも長期のアンロックスケジュールが適用される方針だ。



