経済

2025.07.14 08:00

中国を利するトランプ、関税と予測不能な言動が「人民元を再び偉大に」する

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もっとも、ドルが下降線を辿っているという見方は決して普遍的なものではない。米コーネル大学のエスワー・プラサド教授は、中国が人民元の完全な兌換化に消極的なため、習体制下で人民元の国際化が実現する可能性は限られているとみている。

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「中国は名目上、債券市場も株式市場も国際投資家に開放しているが、問題は中国政府が資本規制の恒久的な解除へ向けて動いたという信頼が十分にあるかどうかだ」とプラサドは主張する。

プラサドによれば中国政府はまず、より国際的な資本市場の枠組みを構築し、法の支配を強化し、中央銀行を独立させなければならない。

「これらは国内外の投資家の信頼を得るために極めて重要だ」とプラサドは指摘した。「米国は制度的枠組みの強さを失いつつあるが、国際金融において特に重視されているのは、完璧さの模範たる必要はないということだ。求められているのは、より優れた組み合わせを提供できることであり、米国が提示する組み合わせに対抗するのは、現状ではまだ非常に難しい」

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とはいえ、トランプがわざわざ習体制下の中国にこれほど都合のよい状況をお膳立てしてやる必要もないはずだ。中国政府が金融改革の遅れに足を引っ張られている現状にもかかわらず、第2次トランプ政権を取り巻く混乱は、ドルに代わる通貨の必要性を日々立証している。

多くの投資家は、今こそユーロの出番ではないかと考えている。また、日本株への海外投資家の回帰を受けて、円の国際的な役割が増大するだろうとみる向きもある。低金利の円建てで資金を借り入れ、高金利の外貨に換えて運用し、利ザヤを稼ぐ「円キャリートレード(円借り取引)」の普及も考慮に値する。25年間にわたり金利を0%かそれに近い低水準に抑制してきた日本は、世界最大の債権国となった。投資ファンドは何十年もの間、円を安く借りて世界中の高利回り資産に投資してきた。

しかし、習近平の中国が最も渇望しているのは、基軸通貨の称号だ。習にとって幸運なことに、トランプやその取り巻きたちは喜んでその役割を中国に譲ろうとしているように見える。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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