その他

2025.07.14 11:30

イスラエルとの対決構図強まるトルコ、軍備増強急ぐ 「スチールドーム」構築も加速か

トルコ製短距離弾道ミサイル「タイフン」の発射試験の様子。2025年2月3日、トルコ北東部リゼ(Fikret Delal/Anadolu via Getty Images)

とはいえ、エルドアンが弾道ミサイルにすべてを賭けるつもりでないのは疑いない。また、高度な防衛能力がきわめて重要な抑止力の役割を果たすと彼が認識しているのはほぼ確実だ。

advertisement

エルドアンは2024年、スチールドーム構想を発表し、その際にイスラエルの「アイアンドーム」を引き合いに出した。ただし、スチールドームはアイアンドームと異なり、これ自体が複数のシステムを統合した多層型防空システムとなっている(編集注:アイアンドームはイスラエルの多層型防空システムの最下層を構成する)。トルコはすでに短距離から長距離まで一連の防空システムを開発・生産している。このうち高高度防空システム「スィペル」について、トルコは好んでロシア製の地対空ミサイルシステム「S-400」と比較するが、現在運用されているタイプはまだ弾道ミサイルの迎撃には対応していない。トルコのS-400は現状、トルコにとって唯一の弾道ミサイル迎撃能力だが、スチールドームには統合されていない。

トルコは、イスラエルが空中発射弾道ミサイル(ALBM)を使用してイランの防空システムの破壊に成功したとされる事例も注視していたはずだ。イランの防空システムには、ロシア製の「S-300」や国産の「ババル-373」などがあった。

隣国イランの防空システムが今回、領空深くに侵入してきたイスラエル空軍の戦闘機を一機も迎撃できなかったことも踏まえ、エルドアンはフランスのエマニュエル・マクロン大統領に対し、地対空ミサイルシステム「SAMP/T」の共同生産をトルコに認めるようあらためて要請した。SAMP/Tをスチールドームに統合すればトルコの対弾道ミサイル防衛能力は顕著に高まり、S-400と違って北大西洋条約機構(NATO)の防空システムとの全般的な互換性も向上すると考えられる。

advertisement

ミサイル戦力の増強に加え、エルドアンは航空戦力の広範な能力向上も進めている。大きな問題になった2019年のS-400取得のような過去の政治判断は、トルコ空軍の近代化に重大な影響を及ぼしてきた。トルコは米国製の第5世代戦闘機「F-35ライトニングII」の購入を禁じられたばかりか、米国で開発された既存の戦闘機「F-16」の近代化改修にも支障が生じた。2021年にトルコはF-16の最新型「ブロック70」の取得を求めていたが、2024年になってようやく、スウェーデンのNATO加盟を承認したのと引き換えに認められた。ドイツもトルコによる欧州製戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の購入の承認をためらい、コンソーシアム(共同開発国)の一国として輸出を阻む可能性があった。

次ページ > 航空戦力の更新失敗が致命傷になったイラン

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事