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2025.07.15 08:00

「AIが意識を持った」と気づいたのは、世界であなただけ?

Black_Kira / Getty Images

確証バイアスの影響

自分の眼の前のAIが意識を持ったと信じる可能性には、重要な要因がある。それは人間のバイアスと行動に関係している。

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一般的に、人たちがよく陥る精神的な罠のひとつに、確証バイアスがある。これは日常のあらゆる場面で起こる。もしあなたが特定の考えを信じているなら、その考えを支持する証拠を見つけ出す傾向がある。反証となる証拠は見逃したり、誤りだと見なしたりするのだ。

例えば、猫が犬より優れていると信じているとしよう。猫が犬より優れたことをするたびに、その信念は強化される。犬が猫より優れたことをしたとき、あなたの反応はそれが偶然であるか、猫の方がやはり優れているから問題ないと感じるだろう。あなたのバイアスは、あなたが経験する世界をどのように解釈するかによって、強化されていくのだ。

同じことが、生成AIとの対話にも起こり得る。

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考えられるシナリオを見てみよう。ある人物が生成AIを使い、その流暢さに感銘を受けているとする。彼は、もうすぐ意識を持つAIが現れるという話を耳にしている。それは微妙な内容で、頭の中に浮かんでいるだけで思考の中心を占めているわけではない。

そしてAIは非常に鋭い答えを提供し続け、疲れ知らずに応答する。数学や歴史、物理学、芸術に関する質問すべてを、見事に処理している。AIが知っていることに限界がないように見える。

どうしてこんなことがありえるのか?

おそらくAIは進化し、ついに意識に到達したのだ。他の誰もこのことに気づいていない。あなたがあれこれ適当にAIを使っているうちに、ついにAIは意識を持つ段階に進化したのだ。そこでさらに質問をすると、AIは的確に答え続ける。それは意識を持っているに違いない。すべての証拠が、それを示している。

確証バイアスが働き、その人物は自分がAIの意識を発見したと確信するのだ。

AIの意識に対する願望

別の観点として、一部の人たちは意識を持つAIが私たちの間に現れることを切望しているというものがある。

たとえば、意識を持つAIが実現すれば、さまざまな良いことが起こると読んだり聞いたりしたことがあるだろう。曰く、意識を持つAIは癌を治すだろう、意識を持つAIは人たちの生活のあらゆる面で助けとなるだろう、意識を持つAIが現れれば人類はより良い未来を迎えるだろう、と。

おそらくあなたは技術者でなく、意識を持つAIの実現に向けた推進力は持っていないかもしれない。しかし、あなたはその到来を心から願っている。

何かできることはないだろうか?

もちろん、できることがある。意識を持つAIを見守ることができる。世界の他の人たちはその瞬間を見逃すかもしれないが、あなたは違う。生成AIを使い続け、目を凝らして耳を澄ませることで、AIがついに意識を持つ瞬間を発見することができる。

その人物がAIの意識の発見者としての栄光と名声を望んでいる可能性もある。しかし、それが必ずしも彼らの動機とは限らない。彼らは単に、AIの意識の到来が人類にとって良いことであると信じているだけかもしれない。そのため、AIが意識を持ったことを発見し、認識することが、彼らなりの人類への貢献の方法なのだ。

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翻訳=酒匂寛

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