欧州の宝飾店「77diamonds」の共同創業者兼マネージングディレクターであるトビアス・コルミンドに筆者が話を聞いたところ、「過去2年ほどの間にジュエリーやアート、あるいは今回のオリジナル・バーキンのハンドバッグのように特別な希少品の価値が着実に上がっていくの目にしてきた」と語った。また、現在のようにソーシャルメディアでマイクロトレンドが拡散し、それらを追いかけることがますます複雑化している時代では、このような希少で収集価値の高い品物は、投資の対象としての価値だけではなく、それらが象徴する「時代を超えた不変性」や「その物体を通して獲得されてきた、他では再現不可能な唯一無二の物語性」もまた特別な魅力となっているのだと、コルミンドは続けた。
コルミンドはまた、投資目的で収集価値のある品を購入することに対する人々の興味が強まっていると説明し、例としてオークションに出品される希少なダイヤモンドやジュエリーを挙げた。悪名高いマリー・アントワネットのジュエリーコレクションには、フランス革命につながる多くの議論を巻き起こした首飾りが含まれていたが、これは「時代を映す唯一無二の物語を持ち、他のいかなる方法でも再現できない」と彼は言う。
オリジナル・バーキンの物語
バーキン・バッグを製造する高級ブランド、エルメスの歴史は、1837年にティエリ・エルメス（1801-1878）がパリのバス＝デュ＝ルンパール通り56番地に開いた革工房から始まる。この工房で、ティエリは馬具の革製品（手綱や鞍、馬勒など）を手縫いで製作していた。強度を高めるために、その縫製には蝋引き糸と2本の針を使用するサドルステッチと呼ばれる技法が用いられていた。同じ縫い方は、今もバーキンのバッグを製造するために使われており、この仕事を任されるまでに数年間の訓練を積んだ1人の職人が18〜24時間をかけて手で縫い上げている。
