欧州

2025.07.12 12:00

英国とドイツが歴史的接近 欧州は「民主主義の最後の砦」になるのか

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それで言えば、ドイツと英国が防衛面の関係を緊密にしようとしている理由のひとつも財政事情にある(なお、フランスはドイツ、英国との防衛関係を、英独間以上に緊密にしている)。第一次世界大戦前、英国やドイツは巨大な戦艦の建造に莫大な予算を投じていたが、それは過去の話だ(カナダ出身の歴史家マーガレット・マクミランの著書『The War That Ended Peace(邦訳、第一次世界大戦─平和に終止符を打った戦争)』は一読の価値がある)。今日では、もっと慎ましい目標と、新たに見いだされた協力関係でやっていかないといけない。

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こうした文脈において、最近の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は重要な転機になった。というのもこの会議では、加盟諸国が国防費や関連費を国内総生産(GDP)比で5%に引き上げるという、4年前には考えられなかったような目標を掲げたからである。

たしかに欧州では、こうした防衛支出公約の一部は「ごまかし」だという受け止めもあるし、国防費のGDP比を高めればすぐに防衛即応態勢が整うわけでないのも明らかだ。欧州のNATO加盟国のなかでは、英国、ギリシャ、フランス、ポーランド、北欧諸国、バルト三国が最も防衛即応態勢が整っていると言え、そのなかにはすでに積極的な軍事支出を進めている国もある。たとえばポーランドは、国防費をすでにGDPの4%超に高めているとされ、韓国と戦略的な軍事調達パートナーシップも結んでいる。

他方、イタリアやとくにスペインは、国防費の積み増しに消極的だとしてやり玉に挙げられている。イタリアは、本土とシチリア島を結ぶ橋の建設への投資を防衛インフラとして計上することを検討しているとされ、スペインに至っては防衛と関係の薄い支出を何でもかんでも国防費に含めようとしているようだ。

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それでも、「全体でGDP比5%」というNATOの国防費目標は大きな転換点だ。この「5%」は実際には2階建てになっていて、およそ3.5%を一般的な国防費に、残り1.5%をサイバーセキュリティーや、AI(人工知能)を活用した防衛能力などに充てるとされている。この動きはさらに▽欧州連合(EU)による防衛調達向けの1500億ユーロ(約26兆円)の融資枠▽欧州投資銀行(EIB)による最大30億ユーロ(約5200億円)の融資▽ドイツ政府による国防予算の大幅な拡大──といった施策によって加速するだろう。とはいえ、財政支援だけではなお莫大な資金不足に陥るので、民間部門の資本も必要になる公算が大きい。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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