以下、実際に金融業界の就職戦線を経験、某メガバンク・証券・生保業界などから内定を得た現役大学生、斎藤小夏氏による寄稿である。
なぜ初任給がここまで注目されるのか
2025年、採用市場は静かな地殻変動の真っ只中にある。これまで「安定志向」の象徴だった大手メガバンクも、いまや優秀な若手の心を引き留めるため、初任給の引き上げを次々と打ち出している。
背景には、外資系投資銀行やコンサルティングファームが次世代の才能を一気に刈り取る構図がある。特に東大生の就職先ランキングを見れば、その傾向は一目瞭然だ。マッキンゼー、BCG、ゴールドマン・サックス──かつて一握りの“超エリート”だけが選ぶ進路が、今では一定の割合で選ばれる「現実的なキャリア」になりつつある。
日本企業の平均年収は決して低いわけではない。しかし、多くの大手企業では伝統的に「初任給は控えめ、昇給と賞与で調整する」という年功序列モデルが主流だった。
だが、転職が当たり前の時代において、入社から5年後に同じ会社にいる保証はどこにもない。むしろ20代後半でキャリアチェンジを繰り返しながら年収を積み上げる──そんな戦略を選ぶ人材は増加している。
だからこそ、スタート地点での年収は「どこからキャリアを始めるか」という重要な指標だ。
初任給の額がそのまま年収の上限を決めるわけではない。賞与やインセンティブ、各種手当も企業ごとに異なる。ただ、社員に直接年収を尋ねるのはためらわれ、転職サイトに書かれた口コミも信頼性はまちまちだ。
一方で、企業HPや求人情報に掲載される「初任給」は公表される公式情報で、いわば一つの指針になる。
メガバンクも動き出す
こうした潮流を受け、日本を代表する金融機関も動かざるを得なくなった。みずほ、三菱UFJ、三井住友といったメガバンクは、初任給の一斉引き上げを発表。金融業界が一丸となって、外資やコンサルに人材を奪われる“国内流出”を食い止めようとしている。
「転職を考える人は、高い初任給が提示される外資に行く」
そんな声は、いまや就活生の間でもよく聞く。特にグローバルバンクは、日本市場に積極的に投資を拡大しており、採用競争はますます熾烈になっている。



