成果につながる分岐点
3年間「NEW SALES OF THE YEAR」の審査にアドバイザリーボードの一員としてかかわり、毎年多くの企業の変化を見てきた。そのなかで、営業変革に大きな成果を上げている企業と、そうでない企業の違いが、より明確に浮かび上がってきた。

第一に、生成AI活用だ。生成AIはもはや先進企業だけのものではなく、広く普及し始めている(図表参照)。しかし、営業現場への浸透度には企業間で大きな開きがある。この差の 最大の要因は、経営陣による投資のスピード、そして組織的な動きとして実装できるかどうか、である。
第二に、「顧客志向」を本質的に実行できているかが、大きな分岐点となっている。応募企業のエントリーシートを読むと、ただ「顧客志向」という言葉を使っているだけの企業も多いが、なかにはその意味を徹底的に追求し、自社における具体的な活動・行動に落とし込み、組織に浸透させることに成功している企業があり、着実に成果を上げているのである。
第三に、徹底した数値化と見える化の重要性である。エントリーシートにまったくKPIや数値が出てこない企業もある一方、営業生産性や1人当たりの粗利・売り上げ、顧客別のコスト、組織としての業績を定量的に測り、常にトラッキングしてPDCAを回している企業は、明確な成果を上げている。徹底的なデータドリブンで動ける組織体質が、営業変革の成否を大きく左右する。
生産性向上のために、生成AIの役割 はますます重要になる。しかし、単なるツール導入だけでは成果は出ず、投資がすべて無駄になるだろう。うまく活用するには、営業現場の全員が「営業マネージャー」レベルの、アウトプットの質の担保や業務設計力をもつことが求められる。つまり、新人営業でも、生成AIを部下のように活用し、今まで2~3人のチームで上げていた成果を1人で出せるよう、短期間で育てる仕組みが組織的に必要になるのだ。
1960年、池田勇人首相が打ち出した「所得倍増計画」は、巨額の設備投資により、国民総生産(GNP)を10年で2倍以上に引き上げることに成功した。あれから65年。今度は、賢いAI・デジタル投資と組織変革によって、長時間労働に頼らずに、営業を含む生産性の「倍増」が求められている。個人の頑張りを求めてはならない。未来の競争に生き残るのは、いち早く組織的な変革に成功する企業だ。


