北米

2025.07.14 14:00

「約束の地」米国の移民出身ビリオネアはトランプの移民政策をどう考えているか?

2025年7月4日、「ワン・ビッグ・ビューティフルビル」に署名し、ホワイトハウスで独立記念日を祝うトランプ米大統領(Photo by Samuel Corum/Getty Images)

2025年7月4日、「ワン・ビッグ・ビューティフルビル」に署名し、ホワイトハウスで独立記念日を祝うトランプ米大統領(Photo by Samuel Corum/Getty Images)

フォーブスの最新の世界長者番付には、米国在住の移民出身ビリオネアが名を連ねている。その数は過去最多となる125人で、全員がトランプ大統領の移民取り締まりについて意見が一致しているわけではない。

懸命に働き、法律を守り、地域社会に貢献した移民

「もしも現在のような政権が当時も権力を握っていたら、自由と機会の国に住みたいという私たち家族の願いは大きく妨げられていただろう」と語るのは、不動産開発業者のビリオネア、ホルヘ・ペレスだ。彼は、かつての友人でビジネスパートナーでもあったトランプの政権をそう非難する。

「私と私の家族、またカストロ政権から逃れようとしたキューバ人の家族は、この国に入国すら許されなかっただろう。さびれた観光地だったマイアミは今や活気ある世界都市に変貌しているが、私は、不動産開発業者としての貢献、マイアミの発展に貢献することができなかったはずだ」。

ペレス(75)は、1949年にアルゼンチンでキューバ人の両親のもとに生まれた。1968年にマイアミに移住し推定26億ドル(約3822億円。1ドル=147円換算)の富を築き、1976年に米国市民権を取得した。彼は、フロリダでの不動産取引でトランプとも組んだこともある。トランプは、ペレスの著書『Powerhouse Principles』(2008年)の序文で、「不動産について教えてくれる唯一の人物」とペレスを称えていた。

すべてのヒスパニック、すべての移民への侮辱

しかしペレスは、2017年以降にトランプを公然と批判するようになった。ペレスは同年CNNのインタビューにおいて、メキシコ国境の壁建設に協力するようトランプから要請されたが断ったと明かし、この壁の構想を「すべてのヒスパニック、すべての移民への侮辱だ」と語っていた。それから8年後、トランプは2期目の政権発足にあたって、国境の壁の建設を再開し、米国史上最大規模の不法移民の強制送還を宣言した。

法を犯した不法移民の国外追放に同意、しかし市民権獲得の道も開かれるべき

不法移民の問題には何らかの対応が必要だとペレスは言う。彼は、米国内で法を犯した不法移民は「それにふさわしい結果、すなわち国外追放に直面すべき」という点には同意している。しかし「現政権のやり方は非道だと感じている」と明言し、「懸命に働いて努力し、法律を守り、地域社会に貢献した(不法)移民には、市民権獲得への道が開かれるべきだ」と語っている。

我々が生き延びるためには移民が必要

プロフットボールリーグNFLの『ジャクソンビル・ジャガーズ』オーナー、シャヒド・カーン(74)は、パキスタンから16歳で渡米した。カーンはペレスほど率直ではないが、「多くの罪のない人々がトランプ政権の移民政策の犠牲になっている」と語る。カーンが創業した自動車部品メーカーのフレックス・エヌ・ゲートは、バングラデシュやチュニジア、モロッコなどから来た難民や移民を米国内の工場で雇用しており、「我々が生き延びるためには移民が必要だ」という。

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編集=上田裕資

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