人工知能(AI)関連スタートアップのLangChain(ランチェーン)が、評価額11億ドル(約1620億円)で1億ドル(約147億円)の資金調達に向けて交渉を進めていると、事情に詳しい4人の関係者がフォーブスに明かした。フィンテック企業のKlarnaやHR(人事管理)ソフトのRipplingなどの企業のエンジニアが、OpenAIのGPT-4のようなモデルを用いてアプリ開発を行う際に使用するツールを開発している同社。その調達ラウンドは、ベンチャーキャピタルのIVP主導によるものだ。
2025年のフォーブス「AI 50」および2024年の「ネクスト・ビリオンダラースタートアップ(次世代ユニコーン)」リストに選出されたLangChainの年間収益は、関係者2人によれば約1600万ドル(約23億5000万円)に達している。同社は、フォーブスのコメント要請に応じず、IVPもコメントを控えている。
今回の資金調達額はこれまで公表されていなかったが、TechCrunchが最初にこの取引の存在を報じていた。
LangChainは、共同創業者のハリソン・チェイスとアンクシュ・ゴヤルによって2023年に設立された企業で、少ない行数のコードでエンジニアが素早くAIアプリを立ち上げられるようにするオープンソースのソフトウェアを提供する企業として始動した。同社のプラットフォームは、法律文書のレビューやEコマースの返金処理を行うための生成AIを活用した多様なツールの開発に用いられてきた。
LangChainの最初の製品である「LangSmith」は、開発者がコードを評価・監視・デバッグする際に役立つツールで、AIモデルの正確な回答や性能の維持を可能にすることで、企業がプロダクトを迅速に出荷できるようにしている。このツールは、ウーバーやリンクトインといったハイテク大手や、MercorやLovableといった話題のAIスタートアップを含む約4万のチームに利用されている。
LangChainは2024年初め、特定の業務を自動化する「AIエージェント」の構築を支援する新たなツール「LangGraph」もリリースした。同社のこれらツールの月間ダウンロード数は、2000万回を超えると同社のウェブサイトには記されている。
同社は今回のラウンドに先立ち、2024年2月にセコイア・キャピタル主導のシリーズAラウンドで、評価額2億ドル(約294億円)で2000万ドル(約29億4000万円)を調達していた。LangChainの他の投資家には、BenchmarkやConviction、Lux Capitalなどの有力ベンチャーキャピタルが名を連ねている。
AIスタートアップ各社がヘルスケアやエンジニアリング、金融などの分野に特化したアプリや機能の開発にリソースを投入するなか、LangChainは自社のツール群を開発者に提供する上で有利な立場にあると見られている。
ただし同社の競合としては、AIコーディングツールのCursorやWindsurf、Lovableのようなウェブサイトの開発支援アプリなども台頭しており、AIの日常業務への導入を効率化し、自動化するソリューションを巡る競争は激しさを増している。



