アジアを中心に急増するLNG需要
LNGの主な輸送先は、アジア方面だ。アジアの4大主要国である中国、インド、日本、韓国は、エネルギー転換と温室効果ガス排出削減計画の一環として、LNGへの投資を継続している。だからこそ、世界の大手エネルギー企業はLNG事業に注力しているのだ。
石油資源の豊富なサウジアラビアは、これまでLNGをほとんど無視してきた。だが、イタリアのミラノで開催される天然ガス業界最大の年次会議「ガステック」を前に、同国も今後はLNG分野で存在感を増したいとの意向を示している。
サウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコは4月、米LNG企業ネクストディケードから年間120万トンのLNGを購入する20年契約を結んだ。これにより、サウジアラビアはLNGを国際市場で販売したり国内に輸入したりする選択肢を得ることとなった。これに先立ち、サウジアラムコは2024年9月、米LNG企業ミッドオーシャン・エナジーの株式の49%を取得していた。市場は、サウジアラビアをはじめとするエネルギー業界の主要な国や企業によるこのような微妙な変化を、注意深く見守っている。
価格設定法の見直しや柔軟な契約が業界に変化をもたらすか
価格設定方法の多様化や短期から中期にかけての流動性は微妙な変化だが、長期的な影響を与える可能性がある。これには仕向地を問わない契約や原油価格連動型契約の縮小、短期の臨時取引の増加などが含まれる。
欧州では、温室効果ガス排出ネットゼロ目標の達成に向けて厳格な政策が取られていることから、長期的なLNG契約に対する需要が減退する可能性がアジアに比べて高い。そのため、契約や価格設定の柔軟性が必要となるかもしれない。国際エネルギー機関(IEA)は、生産者が多様な価格設定法を採用しつつあるため、欧州の契約に縛られないLNGの需要は、2023~30年にかけて約40%増加すると予測している。アジアでは、2030年までに見込まれる需要の増加分のうち、契約で賄われるのは3分の1未満に過ぎず、それ以外の大部分は韓国と新興国が占める。
IEAは、従来の仕向地固定型契約が段階的に終了し、仕向地が柔軟な新たな取引への移行に伴い、2027年までに仕向地自由型契約の割合が51%に拡大するとみている。価格設定条件の変化に関しては、ガス価格連動型の指数化とハイブリッド価格設定方式の役割が増大する中、原油価格連動型契約の割合は2023年の56%から27年までに52%に縮小し、その後さらに低下すると予想されている。
価格設定法の改善は需要を刺激するとともに、天然ガス生産者に供給調整を促す仕組みとして機能することで、供給過剰の緩和にも役立つ可能性がある。だが、供給過剰であろうとなかろうと、世界のLNG市場がかつてないほど柔軟で対応力のあるものになるための変化は、着実に進行している。


