スポーツ

2025.07.11 14:15

「2070年人口半減」データの衝撃が突きつける、自競ファースト「愚の骨頂」と「待ったなし」のスポーツ界生存戦略

imtmphoto / Shutterstock.com

2024年からバレーボールの新リーグとしてスタートしたSVリーグ大河正明チェアマンは、日本における競技人口の減少は、多様性でカバーできるとしていた。SVリーグは新リーグにあたりアジア枠を含む外国選手枠を3人に変更。バレーボールのセリエAではコート上に3人以上のイタリア国籍選手が立つというルールを設けているが、これにより逆に外国籍選手は3人コートに立つことができ、日本もこれに倣った形だ。

advertisement

多様性を具現化している例はラグビー日本代表チームだろう。国際統括団体であるワールドラグビーの規定による日本代表資格は、1.日本で出生、2.両親または祖父母のうち1人が日本出生、3.直前の5年間日本に継続居住、4. 通算で日本に10年居住…のうち、いずれか一つの条件を満たすことだ。これにより多様性を持ったチーム編成を可能としているわけだが、外国籍選手を小学生レベルのプレーからチームに馴染ませていけば、上記の条件1のみを採用する日本スポーツ界でも競技人口の増加に寄与することが可能となる。

実際団体スポーツの日本代表レベルとなると海外生まれの選手が多かれ少なかれメンバーとして活躍している。近年では、ワールドベースボールクラシックで活躍したMLBセントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバー選手などのその好例だろう。

自身を単一民族だと思い込み、ゼノフォビア (xenophobia=外国人恐怖症)が著しい日本人にとって、小学生から、育成世代から外国生まれの選手と親しんでプレーするのは、簡単なことではないのかもしれない。しかし排他的な精神を打ち消し、スポーツの啓蒙に邁進せねば、日本のスポーツ界が、消滅の危機に直面するのは、そう遠い将来ではない。

advertisement

厚生労働省が示す2070年の人口ピラミッド は、日本のスポーツ界にとって、避けて通ることのできない、厳しくも明確な未来図である。若年層人口の半減という現実は、これまでの競技者育成モデルやスポーツビジネスのあり方を根底から覆す。スポーツ界は旧態依然とした思考停止から脱却し、痛みを伴う自己変革を断行できるのか。その答えは、単にスポーツの未来を左右するだけでなく、地域社会の活力、国民全体の健康、そして何よりも次世代の子どもたちが享受できる文化の豊かさにも直結する。

これは、遠い未来の話ではない。2070年へのカウントダウンは既に始まっている。スポーツ界のリーダーたち、そして関わる全ての人々が、この危機感を共有し、個別最適の罠を乗り越え、日本全体の未来を見据えた持続可能なスポーツエコシステムの構築に向けて、今こそ具体的な一歩を踏み出す時である。自身が育ったスポーツのみ、自らのリーグ、自身のチームのみに執着しているような時代は、とうの昔に終焉を迎えている。

時計の針は着実に進んでいる。

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事