スポーツ

2025.07.11 14:15

「2070年人口半減」データの衝撃が突きつける、自競ファースト「愚の骨頂」と「待ったなし」のスポーツ界生存戦略

imtmphoto / Shutterstock.com

旧態然とした発想がスポーツ界を蝕む

将来の競技人口が半減するという直接的な脅威に加え、この急激な人口動態の変化は、日本のスポーツ界に多岐にわたる構造的な試練を突きつける。

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まず、タレント発掘・育成システムの崩壊危機だ。母集団そのものが縮小すれば、傑出した才能を持つアスリートが出現する確率も統計上は必然的に低下する。少ないパイを奪い合う中で、各競技団体はより低年齢からの囲い込みや早期専門化を推し進めるかもしれないが、これは結果として、才能の芽を潰し、スポーツ全体の魅力を損なうことにも繋がりかねない。

この構造を抜本的に解決するには、「サッカー」や「野球」というカテゴリーに着目するのではなく「スポーツ競技人口」を生み出す以外にない。日本のスポーツ界は長らく学校教育の部活動にその育成を依存してきた。極端な例を持ち出せば、在学中に部を移籍するとなる「あいつは、野球部を裏切ってサッカーを選んだ」と陰口された。つまり「一人=1カテゴリー」が大原則の育成過程だった。現在、部活動から地域のクラブ活動に移管が行われる時代となっているのだから、もはやスポーツの掛け持ちに異論を唱えても意味はない。アメリカでは特に大学スポーツにおいて複数競技を掛け持ちする点は常識とも言える。

アメリカではプロ選手としても二刀流選手が存在した。古くは1940年年代にNBAのライバルリーグNBLロチェスター・ロイヤルズとNFLのクリーブランド・ブラウンズで優勝経験のあるオットー・グレアム、1950年代にはMLBにおいてミルウォーキー・ブレーブスとNBAのボストン・セルティクスにて2大リーグの優勝を経験ジーン・コンリーもいる。1980年代には、MLBカンザスシティ・ロイヤルズ、NFLのロサンゼルス・レイダースの双方でオールスターに選出されているボー・ジャクソン、MLBアトランタ・ブレーブスでワールドシリーズにNFLダラス・カウボーイズでスーパーボウルに出場したディオン・サンダースなどは記憶に新しいところだ。カンザスシティ・チーフスで3度スーパーボウル制覇を果たしているパトリック・マホームズ(父はDeNAベイスターズでもプレーした野球選手)は、MLBデトロイト・タイガースからもドラフト指名を受けている。こうした選手はみな大学時代も複数のカテゴリーで活躍している。

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振り返ってみれば、日本でもアルベールビル五輪スピードスケート銅メダリストの橋本聖子さんはアトランタ五輪に自転車競技選手として出場。F1ドライバーとして知られる片山右京さんも登山家、また自転車競技にも参加。ハードルにて元日本記録保持者で東京五輪に出場した寺田明日香さんは7人制ラグビーで日本代表。ハーフパイプで北京五輪金メダリストの平野歩夢選手は、スケートボードで東京五輪に出場している。

こうした複数競技での活躍の障壁となって来たのは、日本の部活動また高野連など登録制で選手を束縛する日本の協会および連盟。一人の選手に複数競技挑戦を容認すれば、実人口が減少しようとも、全体競技人口は増加に転じる。各団体には、「サッカーの」「野球の」「バスケの」と自身の競技に固執することない、スポーツ界全体の構造改革によるスポーツ全体の競技人口確保に心血を注いで欲しいものだ。

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